マイマイカブリ(その他表記)Damaster blaptoides

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイマイカブリ」の意味・わかりやすい解説

マイマイカブリ
Damaster blaptoides

鞘翅目オサムシ科。体長 30~65mm。体は細長く,特に頭部と前胸は伸長する。触角,肢もともに細長い。前翅は左右融合して開くことができず,翅端は細くなりとがる。後翅退化して痕跡的。移動力が弱く,地域変異が著しい。産地によって外形色彩が異なるためかつては数種に分けられていたが,今日では 1種とされ,その下に数亜種が認められている。日本固有種と考えられるが,タイワン(台湾)からただ 1個体による亜種の記録がある。原亜種は九州地方四国地方中国地方などに産するもので,大型,全体黒色で,わずかに上翅肩部が紫色を帯び,上面は光沢を欠く。上翅端は燕尾状に伸長する。近畿地方に産するものは小型となる。関東地方のものはヒメマイマイカブリ D.b.oxuroides と呼ばれ,頭部と前胸背がやや短くなり,青みを帯び,上翅端の突起は短く針状である。中部地方ではこの 2型をつなぐあらゆる段階の中間型がみられる。北関東地方から東北地方南部にかけては前体部の青みが強くなり,さらに東北地方中部では紅紫色を帯びるようになる。これをコアオマイマイカブリ D.b.babaianus という。一方,佐渡島には頭部が肥大し,前体部が青紫色で上翅に尾状突起を欠くサドマイマイカブリ D.b.capito を産し,その北方粟島にはコアオマイマイカブリに似るが尾状突起のないアオマイマイカブリ D.b.fortunei を産する。東北地方北部のものはキタカブリ D.b.viridipennis と呼ばれ,前体部は美しい紅紫色,上翅は黄緑色で尾状突起を欠く。北海道に産するものはエゾマイマイカブリ D.b.rugipennis といい,前体部は緑ないし銅赤色,上翅は紫色を帯び,尾状突起を欠く。幼虫成虫ともにカタツムリを食べ,前体部の特異な形はこの習性への適応と考えられる。古名は琵琶虫。(→オサムシ

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改訂新版 世界大百科事典 「マイマイカブリ」の意味・わかりやすい解説

マイマイカブリ
Damaster blaptoides

甲虫目オサムシ科の昆虫。日本特産種。頭と胸が他のオサムシ類に比べて著しく長く,Japanese ground beetleとして知られる。左右の上翅は癒着し,後翅を欠く。体長30~60mm。北海道から九州(南限は屋久島)まで分布するが,地方によって多少形態が異なり,次の亜種に分けられている。エゾマイマイカブリ,キタマイマイカブリ,アオマイマイカブリ,サドマイマイカブリ,ヒメマイマイカブリ,コマイマイカブリ,マイマイカブリ。サドマイマイカブリは頭や胸が他の亜種より短く,ややカブリモドキに似ることから,もっとも祖先に近い形を維持しているとする見方もある。成虫,幼虫ともカタツムリ(マイマイ)に頭を突っ込んで食するが,その姿からマイマイカブリと名づけられた。5~7月ころ土中へ産卵。孵化(ふか)した幼虫は5日間くらいで2齢(終齢)となり,さらに約2週間後には土中で蛹化(ようか)する。さなぎは10日前後で羽化する。寒い地方では幼虫で越冬することがある。成虫,幼虫の越冬場所は土や朽木の中で,成虫はしばしば集団で越冬する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイマイカブリ」の意味・わかりやすい解説

マイマイカブリ
まいまいかぶり / 蝸牛被
[学] Damaster blaptoides

昆虫綱甲虫目オサムシ科に属する昆虫。日本特産種で、大形の細長い甲虫。北海道から九州(屋久島(やくしま))まで各地に産するが、地方的に変異があって、厳密には近畿地方以西のものをさす。体長3~6センチメートル余り、頭と前胸は細く伸びており、上ばねは紡錘形に膨らみ、左右のはねが癒着して開かず、後ろばねは退化消失していて飛ぶことができない。脚(あし)はよく発達していて細いが長く、歩行は速い。西南日本産は体が黒く、前胸が長くて上ばねの各先端は棘(とげ)状にとがって伸びるが、中部地方から関東地方にかけて産するものは頭と前胸背部に青い光沢があり、前胸は比較的短く、上ばねの棘も短くなる。東北地方産では頭と前胸が青色から紫色、または赤紫色に光り、上ばねの棘はほとんどなくなる。北海道の個体では頭と前胸が銅緑色になり、上ばねは紫色を帯び、はね先は丸くなる。佐渡島にいるものは頭と前胸が太くて青紫色の光沢があり、はねの棘もほとんどなく、祖先型を思わせる。このような著しい変異のため以前は数種に分けられていたが、二つの型の中間地帯では中間型がいるので1種にまとめられた。幼虫は黒色で青い光沢があり、鎧(よろい)を着たように頑丈で、成虫とともに地表にすみ、カタツムリを襲って殻の中に首を突っ込んで肉を食べる。成虫の頭と前胸が細長いのはこの習性に適応したもので、殻をかぶって歩くのでマイマイカブリの名がついた。冬は成虫態で土中や朽ち木中に潜って越す。

[中根猛彦]


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百科事典マイペディア 「マイマイカブリ」の意味・わかりやすい解説

マイマイカブリ

オサムシ科の甲虫の1種。日本列島の特産種。地域変異に富み,多くの亜種に分けられる。体長30〜60mm。左右の前翅は癒着(ゆちゃく)して開かず,飛べない。一般に暖地のものは大型で全体黒色,翅端の突出が強い。寒地のものほど小型で胸部の色が明るく,翅端の突出が弱い。たとえば関東・中部地方のものは胸背が紫青色のヒメマイマイカブリ,東北地方は紫赤色のアオマイマイカブリ,北海道は緑色のエゾマイマイカブリなどである。成虫,幼虫ともにカタツムリ(マイマイとも)を主食し,カタツムリの殻に頭を突っ込んでいるのでこの名を生じた。他にミミズなども食べる。成虫または幼虫で土中や朽木中で越冬,1世代に2〜3年を要する。
→関連項目オサムシ

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「マイマイカブリ」の解説

マイマイカブリ
学名:Damaster blaptoides

種名 / マイマイカブリ
目名科名 / コウチュウ目|オサムシ科
解説 / カタツムリやミミズを食べます。後ろばねは退化していて、飛べません。地理的変異が大きい種です。成虫で越冬します。
体の大きさ / 26~65mm
分布 / 北海道~九州
幼虫の食べ物 / カタツムリやミミズ

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