日本大百科全書(ニッポニカ) 「オポッサム」の意味・わかりやすい解説
オポッサム
おぽっさむ
opossum
哺乳(ほにゅう)綱有袋目オポッサム科に属する動物の総称。同科Didelphidaeの仲間は、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカに広く分布する。樹上生、地上生、まれに水生の、虫食または雑食に適した有袋類である。口先は長くとがっている。大きさは種により異なり、10~50センチメートルとさまざまである。前足、後ろ足ともに長さはほぼ同じで、おのおのに5本の指がある。後ろ足の第1指は大きく、つめを欠き、他の指に対向する。尾は普通長く、先端近くは裸出し、物に巻き付けることができる。育児嚢(のう)の形態はさまざまで、よく発達しているもの(キタオポッサム、ヨツメオポッサム)、発達が悪く側壁があるだけのもの(ウーリーオポッサム)、さらには育児嚢のまったくないもの(マウスオポッサム、イタチオポッサム)などがある。乳頭の数も少ないもので4個、多いもので27個と幅がある。妊娠期間は有袋類に特有の短いもので、約2週間である。
学者によって分類方法が異なるが、約80種に分類され、代表的なものはキタオポッサムDidelphis marsupialisである。同種は北アメリカの大部分からアルゼンチン北部までに分布する。頭胴長33~50センチメートル、尾長25~50センチメートル。尾はほとんど裸出し、物に巻き付けることができる。体毛は長く、黒、褐色、白などで、体上面は霜降り状になっている。雌には育児嚢があり、中には12~13個の乳頭がある。おもに地上生であるが、木登りも巧みである。夜行性で、昼間は木の洞や岩のすきまなどに潜む。単独で生活し、雑食性で、昆虫、小鳥の卵、果実、小哺乳類などを食べる。妊娠期間は12~13日で、8~18頭、ときには20頭の子を産む。乳頭の数より多い子を産んだ場合、乳頭に吸い付けなかった子は死亡する。新生子の体重はわずかに0.15グラムぐらいである。近似種のミナミオポッサムD. paraguayensisは南アメリカに分布する。
[中里竜二]