オーストラリア抗原(読み)おーすとらりあこうげん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーストラリア抗原」の意味・わかりやすい解説

オーストラリア抗原
おーすとらりあこうげん

B型肝炎ウイルスHBV)発見の端緒となったもの。1964年フィラデルフィアの癌(がん)研究所で、ヒト血清タンパクの免疫遺伝学的研究をしていたブランバーグが、何回か輸血を受けた血友病患者の血清(抗体)がオーストラリア先住民の血清(抗原)と沈降反応をおこすことを認めオーストラリア抗原(Au抗原)と名づけた。その後、HBVの正体解明の進展に伴い、HB抗原とよばれるようになったが、厳密にはHBVの表面抗原がAu抗原と同じものであることがわかり、現在ではHBs抗原とよばれている。

[曽根田正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オーストラリア抗原」の意味・わかりやすい解説

オーストラリア抗原
オーストラリアこうげん
Australia antigen

B型肝炎ウイルスの表層抗原である HBS抗原のこと。1963年,バルーク・ブラムバーグらがオーストラリアの先住民の血清中に新抗原を発見し,この抗原が,何回も輸血を受けている血友病患者の血清中に見られることに気づき,オーストラリア抗原と命名した。しかし,その後多くの学者の研究により,これが B型肝炎の抗原の一つ(B型肝炎ウイルスには抗原が三つある)であることがわかり,今日ではオーストラリア抗原の名称は用いられない。HBS抗原は B型肝炎ウイルス感染の最も一般的な指標になり,この抗原の有無を調べると B型肝炎に感染しているかどうかが判明する。なお,急性肝炎の場合は普通,肝炎が治ると HBS抗原は消えてしまうが,免疫力が低下していると,血中に長期間にわたって存在することがある。このような人を HBS抗原キャリアと呼ぶ。

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