HB抗原(読み)エッチビーコウゲン

デジタル大辞泉 「HB抗原」の意味・読み・例文・類語

エッチビー‐こうげん〔‐カウゲン〕【HB抗原】

hepatitis B antigenB型肝炎肝硬変などを引き起こすと考えられているウイルスの中に存在する抗原

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「HB抗原」の意味・わかりやすい解説

HB抗原
えいちびーこうげん

B型肝炎ウイルスHBV)の感染宿主(しゅくしゅ)(ウイルスの寄生対象となる生物)であるヒトチンパンジーの血液中や宿主細胞内ウイルスの粒子の表面または内部にある抗原で、粒状にみられる。HBs抗原(hepatitis B surface antigen)、HBc抗原(hepatitis B core antigen)、HBe抗原(hepatitis B e antigen)の3種がある。血液中のこの抗原や抗体を測定することは、B型肝炎の発症病態の診断ならびにB型肝炎の疫学的研究に重要な役割をもつ。

 HBs抗原はHBVのエンベロープ(外被)を構成する小粒子で、1964年オーストラリア抗原Australia antigen(Au抗原)として発見され、73年HBs抗原として認められた。分子量2万ダルトン(1ダルトンは1.661×10-27キログラム)でエンベロープの基本タンパク質である。HBs抗原が肝臓細胞内で多く生産されると、血液中に放出される。血液中では22ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の球状粒子または管状粒子としてみられる。

 HBc抗原はHBVのコア粒子の部分にあり、カプソメア(カプシドの構造単位)の基本タンパク質で、分子量1万9000ダルトンである。感染した肝臓の細胞では主として核内にみられる。

 HBe抗原はHBc抗原とともにカプソメアの構造タンパク質に担われて存在する。カプシド(ウイルス核酸と結合タンパク質を取り巻くタンパク質殻)の内部にあり表面には存在しない。eは抗原決定基の名称である。カプシドのタンパク質が多く生産されると、HBe抗原の一部が分解し、血中に放出されるためその存在が確認できる。この状態はHBVの増生(増殖)が旺盛(おうせい)な時期であり、ほかの宿主細胞への旺盛な感染性を現す。HBe抗原はHBe抗体の出現によって消滅し、HBVの感染力も失っていくと考えられる。

[曽根田正己]

HB抗原などによるB型肝炎の診断

前記のようなHB抗原やそれに対応するHB抗体肝炎ウイルス指標として診断および病態の状態を判定する。

[曽根田正己]

HBs抗原とHBs抗体

HBs抗原陽性は、その時点でHBVの感染があることを示し、HBs抗体陽性は過去に感染をしたか、ワクチン投与があったかを知る指標となる。

[曽根田正己]

HBc抗原

HBc抗原陽性、HBc抗体陽性は現在B型肝炎感染の指標となる。低いHBc抗原陽性、低いHBc抗体価陽は過去のB型肝炎感染を示す。とくにIgM‐HBc抗体陽性(IgM=免疫グロブリンM)である場合は急性のB型肝炎ウイルス感染と診断できる。

[曽根田正己]

HBe抗原とHBe抗体

HBe抗原陽性は血中に多量のHBVが存在することを示し、ほかへの感染性が高い状態であることを意味する。同時に慢性B型肝炎で、ウイルスを連続的に増生する状態であると知ることができる。HBe抗体はHBe抗原消失後も陽性である。このためHBe抗原陰性でHBe抗体が陽性となるとB型肝炎が鎮静化しつつあることを示す。またHBe抗体によって母親から新生児への垂直伝染があることを検査する。

[曽根田正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「HB抗原」の意味・わかりやすい解説

HB抗原
エイチビーこうげん

B型肝炎ウイルス (HBV) が体内に侵入すると,ウイルス自身がもつ物質である抗原が免疫機構を刺激し,ウイルスを攻撃する抗体が作られる。B型肝炎の場合,それぞれを HB抗原,HB抗体と呼ぶ。抗体の有無は感染しているかどうかの指標となるが,B型肝炎ウイルスでは抗原が3種類 (HBs,HBe,HBc) 存在し,それに対応して抗体も3種類あるため,病気の進行を知るには双方の状態を詳しく調べる必要がある。たとえば HBs抗体の存在は過去に感染したことを意味し,HBe抗体陽性は感染中であることを示す。加えて HBe抗原陽性は大量のウイルスがあり,他人に感染させる危険性が高い。

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