知恵蔵 「オーダーメード医薬品」の解説
オーダーメード医薬品
オーダーメード医療における医薬品開発は主に、疾病の発生原因、既存の医薬品に対する個々人の感受性の違いの2つの視点から進められている。疾病の発生原因が解明されることによって、予防用あるいは治療用医薬品の開発が飛躍的に発展する可能性がある。また、医薬品に対する感受性の違いが何に起因するかが分かれば、投与前に事前に遺伝子検査をし感受性を評価することで重い副作用を避けることができるようになる。
オーダーメード医療は、個別に高度な医療技術を利用することでの医療費増大の懸念がある一方で、これまで画一的に用いられてきた既存の医薬品を適正に使用できるようになることで医療費が抑制される効果もあると指摘されている。
日本では、「ヒトゲノム多様性解析プロジェクト」「テーラーメイド医療基盤整備プログラム」 などの国家プロジェクトを前身とする「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」が、文部科学省の管轄で2003年にスタート。11年2月現在、中村祐輔教授(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター・センター長)をプロジェクト・リーダーとして、多施設共同研究が進められている。厚生労働省も、ヒトゲノムテーラーメード研究事業への研究費交付などを通じ、プロジェクトを間接的に支援する形だ。「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」は、「病気の詳しい原因を解明することを通して新しい薬や治療法を開発していくこと。さらに、遺伝子の特徴が合うか合わないかを調べて副作用を回避するような『オーダーメイド医療』の実現をはかる」ことを目的とし、日本人の遺伝情報の解析等を進めている。いずれは、オーダーメード医療及び同医薬品に関する知的所有権を自国内に確保し、医療費の負担を将来的に抑えることが目標である。疾病研究では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や胃がんなどの発症に関連する遺伝子の解明、医薬品分野では抗がん剤タモキシフェンの有効性や、抗凝固剤ワルファリンの副作用発現に関する遺伝子の研究など数々の研究成果を発表してきている。
(石川れい子 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報