オープンウオータースイミング(読み)おーぷんうぉーたーすいみんぐ(英語表記)open water swimming

デジタル大辞泉 の解説

オープンウオーター‐スイミング(open water swimming)

海・湖・川などで長距離を泳ぎ、その速さを競う競技水質天候潮汐など、自然条件の影響を受ける。距離は男女ともに、5、10、25キロがあり、フリースタイルで行われる。オリンピックでは10キロの競技が、2008年の北京大会から正式種目に採用された。OWS。→マラソンスイミング

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

オープンウォータースイミング
おーぷんうぉーたーすいみんぐ
open water swimming

水泳競技の1種目。海、川、湖、池などを泳ぎタイムを競う。略称、OWS。国際水泳連盟Fédération Internationale de Natation(FINA)および公益財団法人日本水泳連盟Japan Swimming Federation(JASF)の競技規則では、10キロメートル種目を「マラソンスイミング」、10キロメートル以外の種目を「オープンウォータースイミング」と定義しているが、「オープンウォータースイミング」の呼称は、距離・種目にとらわれない一般的な総称として使用されることが多い。なおオリンピックでは、10キロメートルで順位を競うマラソンスイミングが正式種目となっている。

[鷲見全弘・金子日出澄 2019年8月20日]

歴史

1980年代、海、川、湖、池などを泳ぐ世界各地の水泳大会に統一性をもたせて、一つの水泳競技として確立する機運がFINA内で高まり始めた。その後、FINAによるルール整備がなされ、OWS競技が誕生した。1991年より世界選手権、2008年の北京(ペキン)大会よりオリンピック、2011年よりユニバーシアードの正式種目となった。

 日本では、1996年(平成8)8月10日、福岡市で開催された「1996年福岡国際オープンウォータースイミング競技大会」が初めての本格的な大会である。以降、1998年に世界選手権初出場(男子10位)、2012年(平成24)にオリンピック初出場(男子15位、女子13位)を果たした。2016年のオリンピック・リオ・デ・ジャネイロ大会では男子が8位入賞、女子が12位となるなど、選手強化も着実に実を結びつつある。

[鷲見全弘・金子日出澄 2019年8月20日]

競技

男女ともに、世界選手権では5キロメートル、10キロメートル、25キロメートル、チームリレー(1.25キロメートル×4。男女混合)の4種目が、オリンピック、ユニバーシアードでは10キロメートル種目のみが行われる。なお、トップ選手の10キロメートル種目のタイムは2時間前後である。FINAおよびJASFの競技規則では、競技者全員が壇上から飛び込むか十分泳げる水深の水中からスタートし、水上に設置されたゴール板にタッチしてフィニッシュする競技形式が定められている。しかし実際は、開催地の自然条件にあわせた独自の距離・種目・ルールによる大会も少なくない。また、長距離レースのため、選手伴走船や安全担当船が航行する場合もある。周回片道往復など、さまざまなコースレイアウトがある点や、自然条件(潮流、風、波など)でレースコンディションが大きく変わる点が、陸上競技のマラソンと共通している。

[鷲見全弘・金子日出澄 2019年8月20日]

特色

日本国内では、アウトドアブーム、健康増進ブームなどを背景に、愛好者の競技人口が増え続けている。これに伴い、全国各地で大会数が増加傾向にある。海や川を安全に泳ぐための練習会や講習会を併催している大会が多く、水難事故防止の観点から、地域の活性化だけでなく安全性向上にも貢献するスポーツとして注目されている。

 また、「水泳と自然環境との融合」「水泳を通じた自然との共生」という高いメッセージ性をもつことも、オープンウォータースイミングの特徴の一つである。

[鷲見全弘・金子日出澄 2019年8月20日]

『財団法人日本水泳連盟編『水泳コーチ教本 第2版』(2005・大修館書店)』『財団法人日本水泳連盟編『オープンウォータースイミング教本』(2006・大修館書店)』『財団法人日本水泳連盟編『水泳指導教本 改訂版』(2011・大修館書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 の解説

オープンウオータースイミング

海、川、湖、水路など主に自然の水の中で行われる水泳競技。英語表記の頭文字をとり、OWSと略される。オーシャンスイミングやラフウオータースイミングとよばれることもある。オーストラリアで発祥し、現在は世界各地で大会が行われている。
全競技者が一斉にコースロープの無いオープンコースを泳ぐ点、水質・天候・潮汐など自然条件の影響を大きく受ける点などから、競泳とは異なる技術や知識、経験が必要とされる。
自然の中で楽しむスポーツとして一般の愛好者も増えており、日本では海や川の環境保護の観点でも注目されている。
1991年には国際水泳連盟(FINA)の公認種目となり、世界水泳選手権(通称・世界水泳)で競技が行われるようになった。OWSのうち10kmを超える距離種目は「マラソンスイミング」と呼ばれる。世界選手権では、男女とも91年、94年は25kmのみで競われ、98年には5kmが加わり、2001年からはさらに10kmが加わって、現在は5km、10km、25kmの3種目が行われている。2000年からは、FINA世界オープンウオータースイミング選手権が世界水泳選手権の非開催年に行われるようになった。第1回大会から男女とも5km、10km、25kmで競技が行われている。国際水泳連盟の公認大会では、泳法は自由形、レース時の水温は16℃以上、水深は1.40m以上等の規定がある。
08年の北京五輪では初めて夏季オリンピック正式競技となり、「マラソンスイミング」が行われた。初代金メダリストとして、女子はロシアのラリッサ・イルチェンコ(記録1時間59分27秒7)、男子はオランダのマルタン・ファンデール・ウェイデン(記録1時間51分51秒6)が栄冠に輝いた。
この他、国際水泳連盟が毎年開催する長距離種目のOWS国際大会シリーズとしては、「FINA 10kmマラソンスイミング・ワールドカップ」(09年は全14戦予定)および10kmを超える長距離を泳ぐ「FINAオープンウオータースイミング・グランプリ」(09年は全10戦予定)。距離は大会によって15~57km)の2つがある。
日本では、2000年から毎年開催されている湘南オープンウオータースイミングなどの大会がある。

(葛西奈津子  フリーランスライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini の解説

オープンウォータースイミング

海・川・湖などの自然の水の中で行われる水泳競技のこと。略称・OWS。競技距離が10キロメートル以上のものは「マラソンスイミング」と言う。オーストラリアで発祥し、1991年に国際水泳連盟(FINA)の公認種目となった。以降、世界水泳選手権に取り入れられたほかFINA世界オープンウオータースイミング選手権などの世界大会も行われるようになり、北京五輪(2008年)より夏季オリンピックの正式種目となった。国際大会では一般に男女とも5キロ、10キロ、25キロで競技が行われ、オリンピックでは10キロでのみ競われる。また、自然と親しむスポーツとして一般の愛好家も増えており、世界各地で競技が行われている。日本では、09年に一般社団法人日本国際オープンウォータースイミング協会が設立され、また公益財団法人日本水泳連盟ではOWS検定制度を実施している。16年8月16日には、リオデジャネイロ五輪で平井康翔が8位となり、日本勢として初の入賞を果たした。

(2016-8-18)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android