お水取り(読み)おみずとり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「お水取り」の意味・わかりやすい解説

お水取り
おみずとり

奈良県奈良市東大寺二月堂で行なわれる修二会行事の一つ。3月12日夜の後夜(ごや)の作法途中で行なわれる。修二会は,十一面観音に対して日頃の罪を懺悔する十一面悔過の行事で,天平勝宝4(752)年から続いているとされ,3月(もとは旧暦 2月)の 1日から 2週間にわたって行なわれ,15日に満行となる。お水取りは,修二会の創始者とされる実忠和尚が神名帳を読んで諸神を勧請した際に遅刻した若狭国の遠敷明神(おにゅうみょうじん)が,それを悔いて修正会に供する香水こうずい)を湧出させて奉ったとする伝承をもつ行事で,13日午前1時半頃,咒師(しゅし)と呼ばれる僧の先導で,修正会を勤める練行衆や堂童子などの僧侶が二月堂から出て興成神社で祈りを捧げたあと,閼伽井屋(あかいや)に向かい,その内部にある若狭井で水を汲む。水はお香水と呼ばれ,閼伽井屋と二月堂の間を 3往復して二月堂内陣の大桶に納められ,後夜の作法が再開される。お香水は,13日に神名帳が読まれ,大導師の祈りが行なわれている間に,内陣の須弥壇下に埋め込まれたかめに移し入れられる。一般にお水取りとして知られる大松明が参詣者の頭上に火の粉をふりかけながら二月堂を走る行事は,修二会期間中に毎日午後7時頃から行なわれている練行衆が二月堂に入る際の先導の松明の一種で,お水取りの前段階の行事。12日の松明は,籠松明と呼ばれるスギの葉や薄板などでつくった直径 1mほどのかご状の松明を長さ 6mほどの竹の先に付けたもので,通常は 10本に対して,この日だけは練行衆全員分の 11本出るという特徴がある。

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知恵蔵 「お水取り」の解説

お水取り(東大寺)

奈良県にある東大寺二月堂で毎年行われる行の一つ。正確には「修二会(しゅにえ)」という。例年、3月1日から14日まで本行が行われ、終わるころには冬が明けていることから、春を告げる行事ともいわれる。奈良時代から続く伝統行事で、752年以来、途絶えたことがない。
お水取りは、東大寺を開山した良弁(ろうべん)の高弟、実忠が始めたとされている。旧暦の時代は2月1日から実施されていたため、二月に修する法会「修二会」と名付けられた。二月堂の名もこれに由来する。
人々に代わって罪を懺悔(ざんげ)し、天下泰平五穀豊穣を祈るこの大規模な行事は、まず行を執り行う11人の「練行衆(れんぎょうしゅう)」を決めるところから始まる。良弁の命日である12月16日に練行衆の発表があると、翌年2月20日に前行である別火(べっか)が始まり、練行衆は泊まりこみで本行の準備に当たる。そして3月1日、練行衆は行列を組んで二月堂へ向かい、本行が開始される。本行中、練行衆は毎夜高さ約6メートルの巨大松明(たいまつ)に火をともし、二月堂へ入り深夜まで祈りをささげる。そのときに唱えられるのが、独特な節回しの「声明(しょうみょう)」。音楽的で幽玄な響きがあり、CD発売もされている。
練行衆がお堂入りしたあと、燃えさかる松明は舞台の欄干に掲げられるが、これがお水取りの中で最も有名な「おたいまつ」と呼ばれる場面。降り落ちる火の粉が無病息災をもたらすと言われていることから、たくさんの参拝客が集まる。本行のクライマックスは12日深夜。籠松明(かごたいまつ)がたかれ、練行衆は祈りの合間に、二月堂下にある若狭井(わかさい)に水をくみにいく。これがいわゆるお水取りの儀式だ。くみあげた水は「香水」と呼ばれ、本尊である十一面観音に供えられる。
また本行が終了した15日には、行事に使われた金襴(きんらん)の帽子を幼児にかぶせる儀式が行われ、これをかぶせてもらうと健やかな子が育つと言われていることから、子供連れが大勢二月堂を訪れる。

(高野朋美 フリーライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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