日本大百科全書(ニッポニカ) 「カウリスマキ」の意味・わかりやすい解説
カウリスマキ
かうりすまき
Aki Kaurismäki
(1957― )
フィンランドの映画監督。1957年4月4日、フィンランドのオリマティラに生まれる。タンペレ大学で学んだ後、1981年、兄のミカ・カウリスマキMika Kaurismäki(1955― )の共同監督として映画デビューする。1983年、ドストエフスキーの原作を現代のヘルシンキに移した映画『罪と罰』Rikos ja rangaistusで、単独の映画監督としてのデビューを果たす。1989年の『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』Leningrad Cowboys Go Americaが世界各国で上映され、その独自の映画スタイルが注目される。市井の人々を主役とし、多くの場合彼らは不幸な環境のなかで懸命に生活をしている。際だって派手なアクションを回避したその静態的な舞台は、われわれの現実的日常生活に限りなく近く、カウリスマキの映画を親しみ深いものにする要因をつくっている。若いころより熱心な映画観客でもあった彼は、その古典的映画に対する知識を作品に取り込むことでも知られている。1999年の『白い花びら』Juhaは無声映画であり、彼の映画史に対する一つの姿勢、すなわち古典に対して敬意を払う姿勢を明確に示すものである。2002年の『過去のない男』Mies vailla menneisyyttäでカンヌ国際映画祭グランプリを受賞。その後『街のあかり』Laitakaupungin valot(2006)、『ル・アーヴルの靴みがき』Le Havre(2011)といった秀作を発表している。
[小松 弘]
資料 監督作品一覧(日本公開作)
罪と罰 Rikos ja rangaistus(1983)
カラマリ・ユニオン Calamari Union(1985)
パラダイスの夕暮れ Varjoja paratiisissa(1986)
ロッキーⅥ Rocky Ⅵ(1986)
ハムレット・ゴーズ・ビジネス Hamlet liikemaailmassa(1987)
スルー・ザ・ワイヤー Thru the Wire(1987)
真夜中の虹 Ariel(1988)
レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ Leningrad Cowboys Go America(1989)
マッチ工場の少女 Tulitikkutehtaan tyttö(1990)
コントラクト・キラー I Hired a Contract Killer(1990)
ラヴィ・ド・ボエーム La vie de bohème(1992)
トータル・バラライカ・ショー Total Balalaika Show(1993)
愛しのタチアナ Pidä huivista kiinni, Tatjana(1994)
レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う Leningrad Cowboys Meet Moses(1994)
浮き雲 Kauas pilvet karkaavat(1996)
白い花びら Juha(1999)
過去のない男 Mies vailla menneisyyttä(2002)
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス Ten Minutes Older: The Trumpet(2002)
街のあかり Laitakaupungin valot(2006)
それぞれのシネマ~「鋳造所」 Chacun son cinema - La Fonderie(2007)
ル・アーヴルの靴みがき Le Havre(2011)