カゲネズミ(英語表記)Eothenomys kageus

改訂新版 世界大百科事典 「カゲネズミ」の意味・わかりやすい解説

カゲネズミ (鹿毛鼠)
Eothenomys kageus

日本特産の半地下生のノネズミ。齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類本州の関東および中部地方に分布し,おもに低山の森林に生息するが,富士山八ヶ岳では海抜2400m付近でも見られる。体長約10cm,尾長約4cm,体色は背側が赤褐色,腹側は淡いオレンジ色。同じく日本特産で,本州の高地にすむニイガタヤチネズミに似るが,尾が短い。目と耳介は小さく,地下生活への適応を示す。暗い森林の地面に浅いトンネルを掘り,枯葉などで巣をつくってすむ。おもに夜間,地表を活動して,草の芽,若葉,果実など植物質のうち水分を多く含み,軟らかく,消化しやすい部分を食べる。1産1~4子。

 同属の種で,姿がよく似たスミスネズミE.smithiは富山県以西の本州,四国,九州に分布し,おもに高山の森林にすむが,ハタネズミのいない四国では,ハタネズミにかわって平地にもすむ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カゲネズミ」の意味・わかりやすい解説

カゲネズミ
かげねずみ / 鹿毛鼠
[学] Eothenomys kageus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キヌゲネズミ科の動物。愛知県以北、関東地方までの本州に分布する。低山帯の森林や林縁にすむ。ヤチネズミのいない富士山では亜高山帯にも多く、八ヶ岳(やつがたけ)では森林限界付近にもみられる。頭胴長約90ミリメートル、尾長約45ミリメートル。スミスネズミE. smithiとよく似ている。後足長、尾長がやや短く、乳頭が2対で、3対のスミスネズミと異なるが、3対の個体もある。染色体にも差異があるというが、同種であると考えている研究者も多い。切歯、大臼歯(だいきゅうし)とも無根歯である。草食性。春から秋にかけて出産、1産1~3子。乳頭数、産子数ともに減少傾向にあり、分布域も狭いので、スミスネズミの古い型であるのかもしれない。

[宮尾嶽雄]

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