日本大百科全書(ニッポニカ) 「カサガイ」の意味・わかりやすい解説
カサガイ
かさがい / 笠貝
limpet
軟体動物門腹足綱のうち、前鰓亜綱(ぜんさいあこう)のツタノハガイ科、ユキノカサガイ科、シロガサガイ科や、有肺亜綱のキクノハナガイ科などの諸種のように、笠形をした殻をもつ貝を総称する俗称。
ツタノハガイ科に属する標準和名カサガイCellana mazatlandicaは、小笠原(おがさわら)諸島のみにすむ大形種で、殻口長径70ミリメートル、殻高50ミリメートルに達し、殻表には、殻頂から縁に向かって走る強い放射肋(ろく)がありその上は顆粒(かりゅう)状で、さらにその上に黒斑(こくはん)がある。肋間の溝は深い。内面には銀色光沢がある。他の地方には分布しないので国の天然記念物に指定されている。学名のマサトランはメキシコ西部の地名で産地とあわないが、命名者が産地を取り違えたものと思われる。カサガイと俗称される主要なものに、ツタノハガイ科中にはヨメガカサガイ(別名ヨメノサラ)C. toreuma、マツバガイ(別名ウシノツメ)C. nigrolineata、ベッコウガサガイC. grataなどがあり、ユキノカサガイ科には、ユキノカサガイAcmaea pallida、アオガイNotoacmea schrenckii、ウノアシガイPatelloida saccharina、カモガイCollisella dorsuosaなどがある。また、キクノハナガイ科にはキクノハナガイSiphonaria sirius、カラマツガイS. japonicaなどがあり、他の科に属する笠形の貝も少数ある。
[奥谷喬司]