改訂新版 世界大百科事典 「カザレス」の意味・わかりやすい解説
カザレス
Maria Casarès
生没年:1922-96
フランスの女優。スペインの共和派の閣僚の娘として生まれた。1936年に内戦をさけてパリに亡命し,国立演劇学校を首席で卒業後,マチュラン座に入り,カミュの《誤解》(1944),《戒厳令》(1948),《正義の人々》(1949)の初演で好評を博す一方,《天井桟敷の人々》(1945)や《オルフェ》(1949)などの映画にも出演して人気を集めた。50年代にはオデオン座や国立民衆劇場で活躍し,とくにピランデロの《作者を探す六人の登場人物》の娘役やマクベス夫人を演じて絶讃された。60年代以降もジュネの《屛風》やセネカの《メデイア》で成功し,ベジャールのバレエにも参加して意欲的な活動をつづけている。その強烈な個性と激情的な演技は,一部では感情過多と非難されるが,役柄に合えば圧倒的な迫力を持ち,今日では数少ない悲劇女優の一人と目されている。
執筆者:安堂 信也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報