カツオブシムシ

改訂新版 世界大百科事典 「カツオブシムシ」の意味・わかりやすい解説

カツオブシムシ

甲虫目カツオブシムシ科Dermestidaeに属する昆虫の総称。世界から約750種,日本から約20種が知られている。体長2~10mm。鰹節を食害するところからその名がつけられたが,家屋内では毛織物,動物標本カイコのさなぎなど動物質のものを広く加害する。英名bacon beetleのほかskin beetle,hide beetleなどがある。野外に生息する種の一部が文明とともに家屋内にも発見されるようになった。家屋に侵入して害虫としてよく知られる種はヒメマルカツオブシムシヒメカツオブシムシハラジロカツオブシムシ,トビカツオブシムシ,アカオビカツオブシムシなど6~7種である。とりわけヒメマルカツオブシムシ,ヒメカツオブシムシは繊維に含まれるケラチンを消化できるため,被害は大きい。カツオブシムシ類の体形円形楕円形,長楕円形のものが多く,触角の先の数節が幅広い。また小型種の多くは1対の複眼のほか,頭頂に1個の単眼があり,体表はしばしば鱗片に覆われる。幼虫はヒメマルカツオブシムシではよく肥満しているが,ハラジロカツオブシムシなどはやや細長いシミ形。いずれも褐色の長毛に覆われる。脱皮回数が環境によって一定しないものが少なくない。ヒメマルカツオブシムシなどは幼虫で越冬するが,ハラジロカツオブシムシなどは成虫で越冬する。チビケカツオブシムシクモ類の卵囊や脱皮殻を好んで食し,シラオビマルカツオブシムシは鳥の巣の中からしばしば発見される。またカマキリタマゴカツオブシムシは秋,オオカマキリ卵塊産卵孵化(ふか)した幼虫は卵塊内を食べつくし,翌年初夏のころ成虫となって出現する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カツオブシムシ」の意味・わかりやすい解説

カツオブシムシ
かつおぶしむし / 鰹節虫
skin beetles
carpet beetles

昆虫綱甲虫目カツオブシムシ科Dermestidaeに属する昆虫の総称。広く世界中に分布し、およそ1000種に近い種が知られ、日本からは、二十数種が記録されている。よく目につくのはカツオブシムシ属Dermestesのもので体長10ミリメートル前後、長楕円(ちょうだえん)形であるが、ほかのものは楕円形から円形が普通で数ミリメートル以下、複眼間に単眼が一つある。触角は短くて先端の数節が太いが、ときに先の1節が異常に大きく、円形や三角のことがある。マルカツオブシムシ属Anthrenusなどの種は体表に鱗片(りんぺん)を密布し斑紋(はんもん)をつくる。幼虫は、多くは成虫よりかなり細長く、各節に赤褐色の剛毛の横列があり、尾端に長い剛毛の束があるが、マルカツオブシムシ属の幼虫は後方が広がり、倒卵形で尾端の剛毛は敵にあうとクジャクの尾羽のように開く。成虫、幼虫とも乾いた動物質、ときには植物質を食べ、重要な害虫とされるものも多い。

 カツオブシムシ属には貯穀の害虫もあるが、多くはかつお節、干魚、皮革など動物質の害虫で、骨を残してきれいに食べるので骨格標本の製作に利用される。小形で楕円形のヒメカツオブシムシAttagenus unicolorの幼虫は毛織物の害虫として知られ、小さく円形のヒメマルカツオブシムシAnthrenus verbasciの成虫は5月ごろマーガレットの花上にみられるが、幼虫は動植物標本、毛織物などを食べ大害を与える。ヨーロッパでも同属のアントレヌス・ムゼオルムA. museorumが標本の大害虫である。また、カマキリの卵塊に産卵寄生し、幼虫がその中で成育するカマキリタマゴカツオブシムシ属Thaumaglossaなど変わった生活をするものもある。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カツオブシムシ」の意味・わかりやすい解説

カツオブシムシ
Dermestidae; skin beetle; carpet beetle

鞘翅目カツオブシムシ科の昆虫の総称。小~中型の甲虫で,普通細かい毛や鱗片におおわれる。体は卵形,半球形または細長い円筒形。頭部は小さくてやや下方に向き,通常複眼のほかに単眼1個をもつ。触角は短く,普通 11節から成り,棍棒状かまたは1~3節から成る球稈をもち,前胸下の溝に納まる。上翅は全腹節をおおい,後翅は発達してよく飛ぶ。肢は短く,跗節は5節でたたむと体に密着する。幼虫の体には短毛あるいは長毛が密生し,総状になることもある。幼虫,成虫ともに乾燥動植物を食べる害虫で室内に多く,成虫は花にも集る。世界に約 550種,日本に約 20種が知られている。本科に属するヒメカツオブシムシ Attagenus japonicusは体長 3.5~4.5mm,体は黒ないし黒褐色の楕円形状で,頭は黄色毛におおわれ,触角と肢は黄褐色である。また前胸背の中央部は黒褐色毛が,周縁は黄色毛が,上翅の大部分は暗褐色毛がそれぞれ密生する。体下面は黄色短毛におおわれる。カイコの干蛹や生糸,毛皮などを食害する。日本全土,朝鮮,台湾などに分布する。ヒメマルカツオブシムシ Anthrenus verbasciは体長 1.8~3.5mm,体は楕円形,黒色で,背面が黄 (頭部と前胸背中央) ,褐色 (前胸背後方) ,白色 (前胸背後縁および両側) の鱗毛でおおわれ,それらが斑紋をなす。上翅は褐色で白色の斑紋をもつ。体下面はふくらみ,白色の鱗毛でおおわれる。成虫はおもにマーガレットなどの花に集る。幼虫は全身黒褐色の長毛におおわれ,動物標本や毛織物の大害虫として知られる。世界各地に分布する。

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百科事典マイペディア 「カツオブシムシ」の意味・わかりやすい解説

カツオブシムシ

カツオブシムシ科の甲虫の総称。多くの種類があり,世界に広く分布する。体長は2〜10mm。暗色の地に鱗片による斑紋のある種類が多い。多くの種類(特に幼虫)が乾燥した動物質を食べるが,ヒメカツオブシムシやヒメマルカツオブシムシのように毛織物や動物標本につく大害虫や,カマキリの卵鞘やクモの卵嚢(らんのう)に寄生するものもある。

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