カツオブシムシ(読み)かつおぶしむし(英語表記)skin beetles

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カツオブシムシ」の意味・わかりやすい解説

カツオブシムシ
かつおぶしむし / 鰹節虫
skin beetles
carpet beetles

昆虫綱甲虫目カツオブシムシ科Dermestidaeに属する昆虫の総称。広く世界中に分布し、およそ1000種に近い種が知られ、日本からは、二十数種が記録されている。よく目につくのはカツオブシムシ属Dermestesのもので体長10ミリメートル前後、長楕円(ちょうだえん)形であるが、ほかのものは楕円形から円形が普通で数ミリメートル以下、複眼間に単眼が一つある。触角は短くて先端の数節が太いが、ときに先の1節が異常に大きく、円形や三角のことがある。マルカツオブシムシ属Anthrenusなどの種は体表に鱗片(りんぺん)を密布し斑紋(はんもん)をつくる。幼虫は、多くは成虫よりかなり細長く、各節に赤褐色の剛毛の横列があり、尾端に長い剛毛の束があるが、マルカツオブシムシ属の幼虫は後方が広がり、倒卵形で尾端の剛毛は敵にあうとクジャクの尾羽のように開く。成虫、幼虫とも乾いた動物質、ときには植物質を食べ、重要な害虫とされるものも多い。

 カツオブシムシ属には貯穀の害虫もあるが、多くはかつお節、干魚、皮革など動物質の害虫で、骨を残してきれいに食べるので骨格標本の製作に利用される。小形で楕円形のヒメカツオブシムシAttagenus unicolorの幼虫は毛織物の害虫として知られ、小さく円形のヒメマルカツオブシムシAnthrenus verbasciの成虫は5月ごろマーガレットの花上にみられるが、幼虫は動植物標本、毛織物などを食べ大害を与える。ヨーロッパでも同属のアントレヌス・ムゼオルムA. museorumが標本の大害虫である。また、カマキリ卵塊産卵寄生し、幼虫がその中で成育するカマキリタマゴカツオブシムシ属Thaumaglossaなど変わった生活をするものもある。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カツオブシムシ」の意味・わかりやすい解説

カツオブシムシ
Dermestidae; skin beetle; carpet beetle

鞘翅目カツオブシムシ科の昆虫の総称。小~中型の甲虫で,普通細かい毛や鱗片におおわれる。体は卵形,半球形または細長い円筒形。頭部は小さくてやや下方に向き,通常複眼のほかに単眼1個をもつ。触角は短く,普通 11節から成り,棍棒状かまたは1~3節から成る球稈をもち,前胸下の溝に納まる。上翅は全腹節をおおい,後翅は発達してよく飛ぶ。肢は短く,跗節は5節でたたむと体に密着する。幼虫の体には短毛あるいは長毛が密生し,総状になることもある。幼虫,成虫ともに乾燥動植物を食べる害虫で室内に多く,成虫は花にも集る。世界に約 550種,日本に約 20種が知られている。本科に属するヒメカツオブシムシ Attagenus japonicusは体長 3.5~4.5mm,体は黒ないし黒褐色の楕円形状で,頭は黄色毛におおわれ,触角と肢は黄褐色である。また前胸背の中央部は黒褐色毛が,周縁は黄色毛が,上翅の大部分は暗褐色毛がそれぞれ密生する。体下面は黄色短毛におおわれる。カイコの干蛹や生糸,毛皮などを食害する。日本全土,朝鮮,台湾などに分布する。ヒメマルカツオブシムシ Anthrenus verbasciは体長 1.8~3.5mm,体は楕円形,黒色で,背面が黄 (頭部と前胸背中央) ,褐色 (前胸背後方) ,白色 (前胸背後縁および両側) の鱗毛でおおわれ,それらが斑紋をなす。上翅は褐色で白色の斑紋をもつ。体下面はふくらみ,白色の鱗毛でおおわれる。成虫はおもにマーガレットなどの花に集る。幼虫は全身黒褐色の長毛におおわれ,動物標本や毛織物の大害虫として知られる。世界各地に分布する。

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