改訂新版 世界大百科事典 「カツオマグロ漁船」の意味・わかりやすい解説
カツオ・マグロ漁船 (かつおまぐろぎょせん)
カツオ一本釣りとマグロはえなわ(延縄)を行う漁船の総称。以前は1隻の漁船により3~4月ころから10月ころまでのカツオ一本釣り漁,11月ころから3月ころまでのマグロはえなわ漁を行っていた。
カツオ一本釣り漁船
船の大きさは20トンから500トンくらいまでさまざまであるが,100トン以上の大型船はほとんど鋼船である。小型船はほとんど木船であったが,資材,人手不足などの関係からFRP(強化プラスチック)で作られるようになった。このFRP漁船は100トン級までいろいろな大きさの船が建造されている。船の全周に魚釣り台を取り付け,バウスプリット(斜檣(しやしよう))も幅広く作り魚釣り台とする。その魚釣り台にそって散水管をめぐらし,操業時には機関室の強力なポンプで散水する。前甲板には2列に魚倉がならび,各魚倉は漁場への往航時には餌イワシの活魚倉に使用される。操業中は順次ブライン凍結用の急冷倉として使用され,凍結を終わったカツオの入った魚倉はそのまま保冷用の魚倉として使用される。活魚倉は従来船底換水孔による自然換水方式であったが,海水ポンプによる強制循環方式となった。このほか自動カツオ釣り機や餌イワシを移送するポンプが開発され,設置されるようになった。
マグロはえなわ漁船
カツオ一本釣り漁業の裏作として冬期間だけ操業していたが,1932-33年ころから専業船としてマリアナ,パラオ,カロリン,マーシャルの諸島方面に出漁していた。第2次大戦後,マッカーサー・ラインが撤廃され,冷凍マグロの輸出や魚肉ハム,魚肉ソーセージ原料としての旺盛な需要に支えられ,中・大型のマグロはえなわ漁船が続々と建造された。船の大きさは100トン未満のものと300~500トンのものが多い。大型船は航海日数が6ヵ月以上にもなり,復原・耐航性にすぐれ,居住性も良好なものが多い。上甲板前部にラインホーラー(揚縄機),ブランリールを,後部甲板上にはえなわ格納箱またははえなわを巻きつけるオートリールを備えている。マグロを高品位に保ち,魚価向上のために凍結室温度-55℃,魚倉温度-50℃の冷凍装置を備えるものが多く,魚倉は厚い防熱材でおおわれている。
→漁船
執筆者:竹内 正一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報