鋼船(読み)コウセン(英語表記)steel ship

デジタル大辞泉 「鋼船」の意味・読み・例文・類語

こう‐せん〔カウ‐〕【鋼船】

船体構造の主要部分を鋼鉄で造った船。鋼鉄船

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精選版 日本国語大辞典 「鋼船」の意味・読み・例文・類語

こう‐せんカウ‥【鋼船】

  1. 〘 名詞 〙 船体の主要構造の材料に鋼を用いた船。鋼鉄船。

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改訂新版 世界大百科事典 「鋼船」の意味・わかりやすい解説

鋼船 (こうせん)
steel ship

船殻の主要構造の材料に鋼材を用いた船。鉄材を用いる鉄船iron shipとは区別される。1783年H.コートにより新しい製鉄法が発明されて以来,鉄材が船体用材料として部分的に使用されるようになり,1821年には最初の鉄製汽船アーロン・マンビー号建造された。当初は鉄で船を造ることに不安ももたれたが,木船に比べ船体の大型化,船殻重量の軽減,有効な構造法,長寿命化が可能なためしだいに鉄船の建造が盛んになり,43年には排水量3618トンのグレート・ブリテン号,さらに58年には総トン数1万8915トンという,当時としては異例の大型のグレート・イースタン号が建造された。1850年代後半から60年代初頭にかけてH.ベッセマー,W.シーメンズによる新しい製鋼法が発明されてからは,鉄材より優れた性質をもつ鋼材が提供されるようになり,62年ごろには最初の鋼船が建造された。77年には初めてロイド船級協会に鋼船が登録されたが,このころまでが鉄船の全盛時代であり,85年ごろからは鋼船の建造が増え始め,その後の製鋼法,鋼船の設計法・建造法の進歩により現代に続く鋼船の時代となった。日本では1890年鋼材が輸入されるとともに,大阪商船が三菱長崎造船所に発注して建造した,貨客船筑後川丸(総トン数610トン)が国産初の鋼船である。

 鋼材としてもっとも一般的なものは軟鋼である。日本の船級協会である日本海事協会の鋼船規則では,船体用圧延鋼材としての軟鋼について,降伏応力,伸びの最小値および引張強度の範囲を規定するとともに,切欠靱性に関して衝撃吸収エネルギーにより4段階の鋼種に分類している。軟鋼に比べ降伏応力,引張強度が高い鋼材を用いれば,船体重量を減少させ載貨重量を増大させることができる。このような目的で使用される鋼材が高張力鋼であり,前述の鋼船規則では3種類の高張力鋼を規定しており,経済性を考慮して,強力甲板,船底外板,ヘビーデリックなどの応力の高くなる個所に使用される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鋼船」の意味・わかりやすい解説

鋼船
こうせん
steel ship

鋼材で造った船。船は造船技術の進歩に伴って木造船から木鉄交造船鉄船,さらに製鋼法の発明と改善によって鋼船へと推移してきたが,現在の大型船は鋼船が一般的で,タービン機関やディーゼル機関を推進力としている。 1868年イギリスのロイド船級協会 (→ロイズ船級 ) は鋼船を建造するための規則を発表,鉄より材料強度がすぐれている鋼を,鉄より2割方少い厚みでよいと認めた。 73年フランスが初めて鋼製軍艦『ルドータブル』号を建造。 79年イギリスで最初の鋼航洋汽船『ロトマハ』号が,また日本でも,90年長崎造船所で鋼船『筑後川丸』が進水した。現在は小型船以外は,ほとんど鋼船となっている。その後,造船業と船主による研究が進み,鋼船の貨物積載能力が木船,鉄船と比べて飛躍的に伸びた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鋼船」の意味・わかりやすい解説

鋼船
こうせん

船体の主要構造を鋼材(軟鋼)でつくった船。長い木船の時代ののち、鉄船に次いで19世紀後半から鋼船が出現し、20世紀に入って完全に鋼船の時代となった。鋼材の使用によって木船よりはるかに大型化が可能になり、しかも、船全体の重量に対する貨物重量の割合が増し、また船の寿命も延びた。造船技術の発達に加えて、軟鋼より強い高張力鋼が使用可能となったこともあって、載貨重量56万トン、長さ約400メートルまでの船が建造されている。

[森田知治]

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世界大百科事典(旧版)内の鋼船の言及

【商船】より

… 日本は海に囲まれた国情から,早くから朝鮮や大陸との交易が行われていたものの,優れた航洋性を有する本格的な商船の出現は明治時代になってからのことであった。明治時代はすでに鋼船の時代であり,1890年に長崎三菱造船所で建造された大阪商船の筑後川丸(610トン)は日本最初の鋼製商船となった。その後日清,日露の戦争を経て日本経済の発展に伴い,また〈航海奨励法〉(1896),〈造船奨励法〉(1896)などもあって,1911年には日本の商船保有量は120万トン(世界第6位)に達し,20年にはアメリカ,イギリスに次いで世界第3位の海運国になった。…

※「鋼船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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