カテンソウ(読み)かてんそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カテンソウ」の意味・わかりやすい解説

カテンソウ
かてんそう / 花点草
[学] Nanocnide japonica Blume

イラクサ科(APG分類:イラクサ科)の多年草。地下に細長い匍匐(ほふく)枝を出して繁殖する。茎は固まって出て柔らかく、高さ10~30センチメートル。葉は長い柄(え)があって互生し、葉身は三角状卵形で長さ・幅、ともに0.5~3センチメートル。先は鈍く、縁(へり)に鈍い鋸歯(きょし)があり、表面にまばらに毛がある。花序雌雄の別があり、雌花序は最上部の葉腋(ようえき)について頭状、無柄だが、雄花序はその下の数個の葉腋から出て葉よりも長い柄があり、集散状に雄花をつける。本州から九州の明るい林縁などに生育し、国外では台湾、朝鮮半島と中国大陸に分布する。日本にはほかに、鹿児島県にトウカテンソウN. pilosa Migo、南西諸島にヤエヤマカテンソウ(シマカテンソウ)N. lobata Wedd.があり、前者は中国大陸にも分布する。カテンソウ属はこの3種のみからなり、ムカゴイラクサ属に近縁と考えられるが、刺毛がない。いちおう花点草の漢字名があてられており、中国でもこの名がそのまま採用されているが、和名の本当の意味ははっきりしない。属名Nanocnideは、ギリシア語の「小さい+イラクサ」の意味で、イラクサ科にはほかにもイラクサを意味する「cnide」で終わる属名が多い。

[米倉浩司 2019年12月13日]

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改訂新版 世界大百科事典 「カテンソウ」の意味・わかりやすい解説

カテンソウ (花点草)
Nanocnide japonica Bl.

春先,低山地の日だまりに群生して花をつけるイラクサ科の多年草。小型の植物なので,開花期以後は目にとまりにくい。属名は小さな(nano-)イラクサの仲間(cnido)を意味する。茎は高さ10~25cm,多数の走出枝をだし活発な栄養繁殖を行う。葉は互生し,小型の三角状卵形で両面にまばらな毛がある。花は単性花で,雄花序は長柄があり茎の上部から抜き出て3~4月に咲く。雌花序の柄は短く,上部の葉の葉腋(ようえき)につく。雄花は5枚の花被片と5本のおしべをもつが,雌花では花被片は4枚となる。若い植物体はゆでて食用とされている。

 カテンソウ属Nanocnideは東アジア特産属で5種が報告されている小さなグループである。イラクサ属に近縁とされるが刺毛を欠く。離生の托葉をもつこと,雌花の花被片の大きさが等しいことなど,イラクサ属に近縁の植物群の中では最も原始的な特徴をそなえている。
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