ムカゴイラクサ(読み)むかごいらくさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムカゴイラクサ」の意味・わかりやすい解説

ムカゴイラクサ
むかごいらくさ / 零余子刺草
[学] Laportea bulbifera (Siebold et Zucc.) Wedd.

イラクサ科(APG分類:イラクサ科)の多年草。植物体全体にイラクサと同様の刺毛があり、秋に葉腋(ようえき)にむかごをつくるのでこの名があるが、イラクサ属ではなく、ムカゴイラクサ属である。茎は高さ30~100センチメートル。普通、枝分れしない。葉は長い柄(え)があって互生し、長卵形。長さは柄を除き5~18センチメートル。基部は円形となり、縁(へり)には鋸歯(きょし)がある。花序は夏に葉腋から出て円錐(えんすい)状。雌雄の別があり、雄花序は柄がなくて中部の葉腋につき、雌花序は長い柄があって上部の葉腋から出て高くぬけ出る。北海道から九州の山地の林内に生え、国外では東・南アジアに広く分布する。中国名は珠芽艾麻。ムカゴイラクサ属は30種近くが熱帯を中心に分布し、日本には本種とミヤマイラクサの2種が産する。

[米倉浩司 2019年12月13日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ムカゴイラクサ」の意味・わかりやすい解説

ムカゴイラクサ
Laportea bulbifera(Sieb.et Zucc.) Wedd.

山地の木陰に生えるイラクサ科の多年草で,葉や茎に刺毛があってさわると痛い。茎は高さ40~70cm。葉は卵状楕円形で,長さ5~15cm。ともに刺毛を散生する。刺毛には酸が含まれていて,皮膚に刺さると痛みがしばらく持続する。雄花と雌花があり,雌雄同株。雄花の花序は雌花の花序より下方につき,葉より短い。雌花の花序は長い柄があり,茎の上部からつき出ている。雄花の花被は5枚。雌花の花被は4枚あり,うち2枚が花後大きくなって果実を包みこむ。花期は8~9月。このころにはまた葉腋(ようえき)にむかご(珠芽)をつける。ムカゴイラクサの名はこの性質にちなむ。日本全土に分布し,中国北部と朝鮮にもある。

 ムカゴイラクサ属Laportea北米,アジア,南アフリカマダガスカルに分布し,約20種がある。日本にはもう1種,ミヤマイラクサL.macrostachya(Maxim.)Ohwiが自生し,北海道,本州,九州(少ない)に分布する。より大型の植物で葉には粗い欠刻状の鋸歯がある。若芽をつみ,ゆでて食用とする。刺毛はゆでればやわらかくなり,酸もとれる。ミヤマイラクサも同様にして食用とされ,東北地方ではアイコと呼ばれてよく利用される。ミヤマイラクサの茎は丈夫で,繊維をとることがある。

 東南アジアから西ポリネシアには近縁なイラノキ属Dendrocnide(英名nettle-tree)があり,これは樹高5~15m程度の木になる。若い枝に刺毛をもつ種があり,原地の人はこの性質をよく知っていてイラノキの木にはけっして登らない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムカゴイラクサ」の意味・わかりやすい解説

ムカゴイラクサ
Laportea bulbifera; wood-nettle

イラクサ科の多年草。アジア東部の温帯に分布し,日本各地の山地の林下に生える。葉腋に珠芽 (むかご ) を生じて繁殖する。茎は直立し,葉とともにギ酸を含む刺毛があり触れると痛い。茎の上部には細毛がある。葉は長径 10cmあまりの広卵形ないし長卵形で長い柄があり,鋭尖頭であらい鋸歯がある。雌雄同株で,夏に開花する。雄花序は葉腋に出て円錐形をなし,おしべの花糸は花被とは離生する。雌花序は茎の先端部の葉腋から出て円錐形で,枝の片側だけにつく。雌花の2枚の花被片は花後大きくなる。痩果はゆがんだ円形。

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