カディス(その他表記)Cadiz

デジタル大辞泉 「カディス」の意味・読み・例文・類語

カディス(Cádiz)

スペイン南西部、アンダルシア州の都市。ジブラルタル海峡の北西部カディス湾に面し、同国有数の港湾として発展。造船業、漁業、農産物の輸出が盛ん。スペイン海軍の基地がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「カディス」の意味・わかりやすい解説

カディス
Cadiz

スペイン南部にある同名県の県都。人口13万2872(2001)。古称はフェニキア語ガディルGadir,ギリシア語でガデイラGadeira,ラテン語でガデスGades。カディス湾を閉ざすように延びるレオン島の最先端部に位置する。スペイン最良の港を有し,地中海から大西洋へのルートの寄港地であり,北アフリカへの連絡地でもある。カディスは湾内の他の都市,サン・フェルナンド,プエルト・レアル,サンタマリアと連結して大港湾都市を形成している。カディス県の商業,工業(造船,金属),漁業の中心であり,サン・フェルナンドに海軍基地がある。

 ヨーロッパで最も古い都市の一つで,前10世紀ころにフェニキア人によって建設された。当時は完全な島をなす海洋上の重要な拠点であった。砂州の発達によりその後イベリア半島と陸続きになる。イスラム時代には一漁村に変わり,1266年アルフォンソ10世に再征服された。その後長い間海賊活動の舞台になったが,特に1587年のイギリス人ドレークの略奪は有名である。18世紀ブルボン王朝が登場すると,アメリカ植民地との貿易活動を重視した啓蒙改革家は,1717年にセビリャの商務館をカディスに移し,78年にセビリャの植民地貿易の特権を廃止し,通商の自由を確立した。以後カディスには商業の発展と強力なブルジョアジーの誕生をみ,ヨーロッパ先進国から新しい文化の波が押し寄せた。18世紀の啓蒙主義,19世紀の自由主義ロマン主義,空想的社会主義などである。ナポレオンのスペイン侵略と独立戦争(1808-14)の間,非占領地域であったカディスに国民議会が召集され,自由主義的な1812年のカディス憲法が制定された。そして14年フェルナンド7世の絶対王制復活後,カディスは革命の中心となる。1820年リエゴ大尉のプロヌンシアミエントと12年憲法の復活,68年9月の民主主義的革命などの発火点となったのも同市であり,以後内戦にいたるまでアナーキズム運動の拠点となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カディス」の意味・わかりやすい解説

カディス
かでぃす
Cádiz

スペイン南西部、アンダルシア地方カディス県の県都。スペイン有数の港湾都市で、ジブラルタル海峡の北西約93キロメートル、カディス湾東岸の岬の先端に位置する。人口13万3363(2001)。標高14メートルの小さい岩島の上に旧市街があり、東部の港を除き城壁で囲まれている。その外側に新市街が細長く広がる。地中海性気候下にあり、年中温和で雨も少ない。平均気温は1月11.4℃、8月24.9℃。屋上の望楼ミラドールや2階に張り出したテラスをもつ白壁の家が並び、独特の景観をなしている。港は、ぶどう酒やオリーブコルクなどの輸出港として、また、南米、カナリア諸島、アフリカとの定期航路の基地として重要な位置を占める。造船業も盛んである。古来より軍事的にも重要な地で、スペイン海軍の根拠地がある。

[田辺 裕・滝沢由美子]

歴史

紀元前1100年ごろ、フェニキア人が交易のために町を建設したことに始まる。前501年にカルタゴ、ついで前206年ローマによって占領され、商業都市、地中海支配の要石として栄えた。5世紀には西ゴート人の侵入、破壊を受け衰退したが、8世紀のイスラム支配以後復興した。レコンキスタ(国土回復戦争)ではキリスト教徒の前線基地となった。16世紀に始まる「新大陸」との貿易では、特権を与えられ繁栄した。1812年憲法がここで制定され、20年のリエゴ蜂起(ほうき)、68年の九月革命の発火点になるなど、政治的にも重要な舞台となった。また、大土地所有制の下にあったオリーブ、ブドウ、小麦栽培に従事する農業労働者の運動も激しく、アナキストを中心とした1883年のストライキ、同じ時期の秘密結社「黒い手」Mano Negraの活動などが有名である。1936年に起こったスペイン内戦ではフランコ側にいち早く占領され、モロッコと本土との連絡港となった。

[中塚次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カディス」の意味・わかりやすい解説

カディス
Cádiz

スペイン南西部,アンダルシア州,カディス県の県都。港湾都市。セビリアの南南西約 100kmに位置する。カディス湾南部の長さ約 10kmの細い砂嘴上にある。この砂嘴と本土の岬が湾を取囲み,良港を形成している。温暖な海岸性気候をもつ。前 1100年頃にフェニキア人の手で建設され,一時カルタゴの攻略を受けた。その後ローマ帝国の版図に入り繁栄。西ゴート族,ムーア人の支配を受けたのち,コロンブスによるアメリカ大陸到達後は「新大陸」との貿易の本拠地として,西ヨーロッパ諸都市のなかでも特に繁栄を誇った。しかし 18~19世紀には,イギリス艦隊の封鎖攻撃などによって次第に衰え,ラテンアメリカ諸国の相次ぐ独立と,アメリカ=スペイン戦争の敗北などによる植民地の喪失がその衰退に拍車をかけた。 1812年,主権在民をうたったカディス憲法がこの地で制定された。今日では商港として,ワイン,塩,オリーブ,コルクなどを輸出し,石灰,鉄,機械などを輸入。城壁の一部が残り,13世紀に建築された大聖堂などの歴史的建築物や,ムーア風の建物が多くみられる。人口 15万 3550 (1991推計) 。

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百科事典マイペディア 「カディス」の意味・わかりやすい解説

カディス

スペイン南西部,大西洋岸の港湾都市,同名県の県都。対米貿易の中心で,南米,アフリカへの定期航路がある。造船業も行われる。起源はフェニキアの植民市で,フェニキア語ではガディル。カルタゴ,ローマ時代には軍事基地として重要であった。711年―1266年はイスラムの支配下にあり,16―18世紀には新大陸貿易をリスボンとともに独占して繁栄。ヨーロッパの新しい文化が流れこみ,自由な雰囲気のカディスは,1814年フェルナンド7世の絶対王政復活後,革命運動の中心となった。12万4014人(2011)。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カディス」の解説

カディス
Cádiz

スペイン,アンダルシア地方の主要軍港,商港。前1100年頃フェニキア人が植民して以後栄えたが,イスラームの支配下では衰退。1262年カスティリャ王国が再征服。17世紀にセビリャをしのぐ大西洋貿易の港となり,1717~78年にはセビリャに代わってその独占港となった。19世紀には自由主義の拠点の一つとなり,カディス議会が開催された。

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