フェニキア語(読み)ふぇにきあご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェニキア語」の意味・わかりやすい解説

フェニキア語
ふぇにきあご

紀元前2000年紀の末葉からローマ時代に至るまで、レバント(南シリアからパレスチナに至る沿岸地帯)を本拠に、地中海世界で通商植民で活躍したフェニキア人の言語。北西セム語に属するカナーン語の一派で、ヘブライ語ともっとも近い。現存するのは碑文資料だけで、最古のものは前1000年ごろ、最新のものは前1世紀に属する。文学作品はギリシア・ローマの著作家による言及があるけれども、すべて隠滅した。

 フェニキア人による北アフリカの植民都市カルタゴを中心に西方に広がったフェニキア語は、本土のそれと区別してポエニ語Punicとよばれる。カルタゴのほかに、シチリア島、サルデーニャ島、南フランス、スペイン、遠くはブリテン島から出土した、年代も前9世紀から紀元後の世紀に至る、数千の碑文資料が残存する。ほかに、ローマの喜劇作者プラウトゥスの作品中に、ラテン文字で綴(つづ)られ、ラテン語の翻訳がついたポエニ語の台詞(せりふ)がある。

[松本克己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェニキア語」の意味・わかりやすい解説

フェニキア語
フェニキアご
Phoenician language

古代フェニキア人の言語。セム語族の北西群に属し,ヘブライ語モアブ語とともにカナーン語と呼ばれる。最古の碑文は前 13世紀。フェニキア自体では前1世紀にアラム語に取って代られたと推定されるが,北アフリカでは紀元後も話されていた。北アフリカ沿岸のカルタゴなどで用いられたフェニキア語は,ポエニ語とも呼ばれ,ベルベル語の影響がみられる。フェニキア文字による碑文のほかに,ヘブライ語,エジプト語の資料や,ギリシア・ラテン文学のなかにもフェニキア語の単語が多く現れ,その姿を知る資料となっている。

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