ヨーロッパとアフリカ両大陸の間にある海峡。大西洋と地中海とを結び、その間の長さは約57キロメートル。幅は、イベリア半島最南端タリファ岬の南部プンタ・マロキと、対岸のモロッコのアルカサル・エ・セリルとの間がもっとも狭く約14キロメートル、大西洋側の出入口にあるトラファルガー岬とモロッコのスパルテル岬との間がもっとも広く約45キロメートルである。海上交通および軍事上きわめて重要な地で、地中海側出入口のヨーロッパ大陸岸にイギリス直轄領の要塞(ようさい)ジブラルタルが、アフリカ大陸岸にスペイン領の軍港セウタがある。水深は西端のスパルテル岬沖でもっとも浅く345メートル、深い所はジブラルタルとセウタの間で942メートル。表面潮流は大西洋から地中海へ、毎時平均4キロメートルの速さで流れ込み、下層には塩分濃度の高い反対流がある。両岸の岩山、すなわち「ジブラルタルの岩」とセウタ側のアチョ山は「ヘラクレスの柱」とよばれる。
[田辺 裕・滝沢由美子]
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地中海西端,ヨーロッパとアフリカ両大陸間にある軍事上重要な位置を占める海峡。地中海から大西洋への出口にあたり,東の入口にある二つの岬(ジブラルタルのフェルセンとセウタのジャバル・ムーサ)はギリシア時代〈ヘラクレスの柱〉とよばれていた。最狭部は15km,最深部はセウタ沖で942m。歴史的には,イベリア半島にイスラム勢力が侵入したルートであり,現在では北岸にイギリス海軍基地,南岸にスペインの軍港セウタが位置する。
執筆者:栗原 尚子
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…北および西を大西洋に,南と東を地中海に囲まれ,半島の付け根,北東部は幅約435kmにわたり,ピレネー山脈によってヨーロッパ大陸部と画されている。南西端では最狭部14kmのジブラルタル海峡をはさんでアフリカ大陸と対するが,同海峡は,ヨーロッパへのイスラム文明伝播の歴史的回路の一つであった。総面積の84.7%をスペインが,15.2%をポルトガルが,残りを英領ジブラルタルとピレネー山脈中のアンドラとが占める。…
…北海の荒波に耐える頑丈な構造,高い舷側と船尾舵をもつハンザのコッゲ船が活躍した。13世紀末にそれまでモロッコのイスラム勢力の支配下にあったジブラルタル海峡がキリスト教徒側の手に落ち,地中海と北海を結ぶ航路が成立した。東方物産がイングランドやフランドルへ運ばれ,逆に毛織物や原毛が地中海へ運ばれた。…
…〈地中海〉という言葉は,ラテン語のメディウスmediusとテラterraに由来し,文字どおり〈大陸に囲まれた海〉のことで,北極海,オーストラリア・アジア間の地中海,ヨーロッパ地中海(広義には黒海を含む),紅海,瀬戸内海などがある。一般には,地中海といえばヨーロッパ地中海をさし,狭義でのヨーロッパ地中海(ラテン語では内海Mare Internumと呼ばれていた)は,ヨーロッパ南岸,アジア西岸,アフリカ北岸に囲まれ,面積約297万km2,東西3860km,南北700kmに及び,西はジブラルタル海峡で大西洋に,北はダーダネルス海峡でマルマラ海に,南東部ではスエズ運河を通じ紅海と結ばれている。
【地中海地域の自然と生活】
[地中海の形成と地形]
地質学的にみると,地中海は現在の旧世界の部分に,石炭紀から第三紀初頭にかけて(約3億~5000万年前),東西にひろくのびた形で存在していたテチス海の最大の残存であって,第三紀以降のユーラシア大陸の造山運動によって,この海は分断され狭められたのである。…
※「ジブラルタル海峡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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