日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナディアン航空」の意味・わかりやすい解説
カナディアン航空
かなでぃあんこうくう
Canadian Airlines Corp.
カナダの航空会社。2000年、経営不振によりカナダ最大の航空会社であるエア・カナダAir Canadaに吸収合併された。
カナディアン航空自体は純粋な持株会社であり、75%の株式をもつ子会社であるカナディアン航空インターナショナルによって実際の航空業務が行われていた。同社は1980年代の規制撤廃の状況変化に応じて、1987年に五つの航空会社の合併により誕生した会社で、業務内容は国内・国際線の旅客および貨物輸送が中心であった。国際線は五大陸の17か国に約160の路線、国内線は100%子会社であるカナディアン・リージョナル航空を通じて60以上の路線をもっていた。
1994年にアメリカン航空の親会社であるAMRとの総合サービス協定により、ネットワークの再調整など事業再編成の合意書が調印され、企業内の合理化が図られた。国際線に関しても厳しい競争環境のなかで、北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの全地域で「戦略的提携」が結ばれ、とくにアメリカン航空との共同運送協定は世界最大規模であった。そのほか日本航空、アリタリア航空(現アリタリア‐イタリア航空)、フィリピン航空などと提携を結んだ。1998年にはカナディアン航空、アメリカン航空、BA(ブリティッシュ・エアウェイズ)、キャセイ・パシフィック航空、カンタス航空の5社による、世界的規模での提携ネットワーク・航空連合の「ワン・ワールド」が発足した。これらの提携によって300を超える北アメリカの航空路線と500以上の世界の航空路線が提供されることになった。
また、カナディアン航空インターナショナルは戦略として業務の多角化を進め、他社航空機のエンジンの点検・修理およびオーバーホール、旅客・貨物の手続業務、フライト・シミュレーション訓練施設のレンタル業務、従業員訓練業務なども手がけた。しかし、厳しい競争下で業績は低迷し、1998年には1億3700万カナダドル、1999年には14億1900万カナダドルの欠損を計上。1999年末にエア・カナダによる吸収合併の提案を受け入れ、2000年から同社の傘下子会社となった。これに伴ってワン・ワールドを脱退し、新生エア・カナダとしてスターアライアンスを構成している。しかし、エア・カナダは2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、赤字と債務が膨らみ、経営危機に陥り、2003年会社更生手続きを申請、事業再建を目ざすこととなった。1997年末におけるカナディアン航空インターナショナルの航空機数はジェット機が76機で子会社の国内線の航空機が55機。カナディアン航空の1998年の売上高は31億7100万カナダドル。従業員数は約1万5000人(1997)。
[芦澤成光]