カニクイアザラシ(読み)かにくいあざらし(英語表記)crabeater seal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カニクイアザラシ」の意味・わかりやすい解説

カニクイアザラシ
Lobodon carcinophagus; crabeater seal

食肉目鰭脚亜目アザラシカニクイアザラシ属。体長は約 2.6m,体重は 200~300kgになると推定される。出生体長は約 1.1m,出生体重は 20~40kgである。体毛の色は灰色がかった黄土色あるいは茶ねずみ色で,濃色の不規則な斑や輪状の紋が散在する。老成すると毛色淡色になる。出生仔は灰色がかった茶色で,生後2~3週間で換毛し成獣と同色となる。体型は紡錘形。頭部と鼻口部は細長く,口唇は直線的で,鼻孔は吻端にある。前肢は長くオール状で先がとがり鰭 (ひれ) に近い。上顎と下顎門歯が各4本,犬歯が各2本,頬歯が各 10本ある。交尾は 10~12月に行われ,出産期は9~12月である。繁殖場をもたず,雌は雄の攻撃をさけるために,氷上で出産する。単独か 10頭程度の群れで行動する。ごくまれに数千頭の大群をなすことがある。摂餌活動は夜間に行い,噛み合う歯を用いてオキアミ類をこし取って捕食する。名前にカニクイとあるが,これまでにカニを食べていた例はない。南極大陸沿岸周辺に分布する。氷縁に沿って生息するため,季節的な氷縁の移動に分布域が左右され,分布域よりはるかに北側ニュージーランド,オーストラリアおよび南アメリカに迷入することがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カニクイアザラシ」の意味・わかりやすい解説

カニクイアザラシ
かにくいあざらし / 蟹喰海豹
crabeater seal
[学] Lobodon carcinophagus

哺乳(ほにゅう)綱鰭脚(ききゃく)目アザラシ科の動物。体長2.2~2.4メートルの中形のアザラシ。灰褐色から銀白色までの変化に富んだ体色をしている。南極海パックアイス(流氷群)域に広く分布する。「カニクイ」の和名をもつが、ヒゲクジラ同様にオキアミを食べる。このためヒゲクジラが減った分だけ生息数が増え、1500万頭にも達している。氷上の移動法は他種と異なり、体を左右にくねらせる。集群性があり、数頭から3000頭の群れをつくる。

[内藤靖彦]


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