改訂新版 世界大百科事典 「オキアミ」の意味・わかりやすい解説
オキアミ
一般に軟甲亜綱オキアミ目Euphausiaceaの総称。海中を浮遊生活しているエビ形の甲殻類で,ヒゲクジラ類や魚類の天然餌料として重要なプランクトンの一つ。南極海はもちろん,全海洋に豊富に産するので,ナンキョクオキアミなどは近年,重要なタンパク質源として注目され,盛んに漁獲され,冷凍あるいは煮干しとされ,さらに加工されて食品または養魚,家畜などの餌料として用いられる。八十数種が知られ,日本近海からは,マルエリオキアミThysanopoda obtusifrons,ツノナシオキアミEuphausia pacifica,ヒゲブトオキアミStylocheiron carinatumなどが知られている。一見,アミ類とエビ類に似ている。アミ類とは,オキアミ類の成雌の胸部下面に育房ができないこと,腹肢が退化していないこと,尾肢内肢に平衡胞がないことなどで異なる。エビ類からは,胸脚基部にある樹枝状のえらが背甲の外に露出していること,尾節の末端近くに小刀状をした1対の大型で可動なとげがあるなどの点で区別される。また,胸脚の前方のものが十脚目(エビ,カニ類)のように,食物をとるのに適した形の顎脚に分化していないことなどで,体はエビ形をしていても,十脚目のエビ類よりも原始的と考えられている。体長5~80mmくらい,外皮は一般に透明で,眼や発光器のほか体の各所に色素が散在している。発光器は眼柄,胸脚の基部や腹節の腹面など,各所にある。胸脚はすべて2枝に分かれている。
多くは外洋性であるが,沿岸近くの沖合に生息するもの,海底近くを浮遊しているものもある。多くは昼間は深層にいて,夜間は表層へと浮上し,日周性の垂直移動をする。種類によっては,日中でも表層に大群をつくる。音響測深機(魚群探知機)から発した音波が,実際の海底よりも浅い所からも反射して,偽海底とか深海散乱層と呼ばれる反射像を記録紙上に記録することがあるが,オキアミ類もそれをつくる原因の一つに考えられている。雄は交尾して精包を,雌の第6胸脚基部にある生殖孔内の受精囊に付着させる。オキアミ類では産卵と同時に卵を海中に直接放出するもの,後方の胸脚の間に軽く保持するもの,1個ないし1対の卵塊として付着させているものなどがある。卵はノープリウスで孵化(ふか)し,メタノープリウスとなった後,この類に特有なカリプトピス,フルキリア,キルトピアの各幼生期を経て,成体の形になる。
→ナンキョクオキアミ
執筆者:蒲生 重男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報