改訂新版 世界大百科事典 「カマアシムシ」の意味・わかりやすい解説
カマアシムシ
原尾目(カマアシムシ目)Proturaに属する昆虫の総称。原尾類ともいう。一生を落葉層や土の中で過ごす半透明ないしあめ色の小さな細長い虫で,体長は1mm内外。どこの森にも草原にも見いだされる(1m2当り100~1000個体程度)。翅は終生現れず,触角も眼もない。口の構造は,一般の昆虫とは違って,大あごや小あごが平素は頭蓋の内側に引き込まれているので,外からはそれらの先端だけしか見えない。3対の肢のうち,より大きい前肢は機能上触角の代役を果たしており,跗節(ふせつ)には特殊な形状の感覚毛が列生している。これを頭上にふりかざし,短い中肢と後肢とではい歩く姿が鎌をささげつつ進むかのように見えるとして,カマアシの名が与えられた。しかし,鎌に相当するような機能はもっておらず,また土の中に穴を掘る能力もない。目だった変態はしないが,成長の途上で腹節数を増加させる。孵化(ふか)直後は9腹節,これに続く9,10,12腹節の4幼生期を経て,12腹節の成虫となる。新しく増える腹節は腹部最終節とその前の節との間に出現する。一部の種属の雄では,成虫期の前に亜成虫期をもつものがある。
性成熟後は脱皮しないらしい。第1~3腹節腹板には腹脚と呼ばれる小さな胞状の突起が1対ずつある。近縁のトビムシやコムシ類とは違って,外部生殖器をもち,生殖孔は第11腹節腹面に開く。肛門が開口する腹部最終節には尾角や尾糸のような付属物はない。主たる栄養源は菌根。世界各地から約650種が知られており,日本からはヨシイムシNipponentomon nippon,ヨロイカマアシムシSinentomon yoroiなど60種以上が記録されているが,かなりの増加が見こまれる。
執筆者:今立 源太良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報