カミヤツデ(読み)かみやつで

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カミヤツデ」の意味・わかりやすい解説

カミヤツデ
かみやつで
[学] Tetrapanax papyrifer K.Koch

ウコギ科(APG分類:ウコギ科)の常緑低木ないし小高木で、高さ3~6メートル。ツウダツボク(通脱木)またはツウソウ(通草)ともいう。葉は互生して枝先に集まり、ヤツデに似ており、径50~70センチメートル。掌状に6~8裂し、裂片の先はさらに浅く2~3裂する。裏面白色綿毛を密生する。12月ごろ、淡褐色の綿毛を密生した長さ50~60センチメートルの円錐(えんすい)花序を頂生し、散形状に集まって淡緑白色の小花を開く。花弁雄しべとも4個で、まれに5個のものもある。果実は小球形で黒く熟す。中国大陸南部、台湾原産で、成長は早く、関東地方南部以南の暖地で植栽される。東京では冬に地上部が枯れる。繁殖は、株の周りに地下茎から小苗が出るので、これを株分けする。茎の髄が白くて大きく、これから書画用紙などにする通草紙をつくり、また、水中花など造花の材料、包装の詰め物などにした。

小林義雄 2021年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カミヤツデ」の意味・わかりやすい解説

カミヤツデ(紙八手)
カミヤツデ
Tetrapanax papyriferum

ウコギ科の大型常緑低木。ツウダツボク (通脱木) ,ツウソウ (通草) などの名で呼ばれることもある。中国大陸南部と台湾などに自生する。日本では庭木として植えられることもあり,暖地では逸出して自生状態となっている。地下に長い根茎が走り,それから出る茎は直立して生長が速く,1~2年で 2mから 5mにも達する。この幹は太く,柔らかく,中央に白い髄が発達している。葉は幹の先に集ってつき,長い柄があって全体は径 30~60cmもの円形で,ヤツデのように掌状に裂ける。葉質は薄く,裏面に淡褐色の毛が密に生えている。秋から冬に大きな円錐花序を出し,この花序の軸にも葉の裏と同じ毛が密生する。個々の花は小さな黄白色の4弁花で多数が球状に集ってつく。幹の髄を集めて圧縮し,薄くそいだものを通草紙と呼び,中国で古くから紙として使われた。

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