改訂新版 世界大百科事典 「カルロス2世」の意味・わかりやすい解説
カルロス[2世]
Carlos Ⅱ
生没年:1661-1700
スペイン王。在位1665-1700年。スペイン・ハプスブルク朝最後の王で,その治世中にスペインは内政外交ともに破綻をきたし,その衰退は決定的となった。4歳で即位したが,病弱で統治能力を全く欠いたため,治世当初の10年間摂政を務めた母后マリアナ・デ・アウストリアを中心に,彼女の聴罪師ニタルト,寵臣バレンスエラ,父王フェリペ3世の庶子フアン・ホセ・デ・アウストリアなどのあいだで,激しい権力闘争が繰り広げられ,宮廷周辺ではさまざまな陰謀がうずまいた。列強はスペインの弱体化を見て大いに野心をかきたてられ,数度にわたってスペイン分割を画策した。とくに,カルロス2世が1679年に再婚した後も子供に恵まれなかったことから,スペイン王位継承問題は,その遺産もからんでヨーロッパ全体の一大関心事となった。スペイン王位への候補者としては,最終的に,ブルボン家はフランス王ルイ14世の孫にあたるアンジュー公フィリップ,ハプスブルク家は神聖ローマ皇帝レオポルド1世の子カール大公をおのおの擁立したが,カルロス2世は遺言で前者を指名したことから,彼の死後,ヨーロッパを二分するスペイン継承戦争が勃発した。その結果,スペインはヨーロッパに所有していた領土のほとんどすべてを失った。
執筆者:藤田 一成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報