日本大百科全書(ニッポニカ) 「カレリア石」の意味・わかりやすい解説
カレリア石
かれりあせき
karelianite
三二酸化バナジウムの鉱物。赤鉄鉱系鉱物の一員。コランダム、赤鉄鉱と同構造。形態は六角柱状。この種の酸化鉱物では、バナジウム(V)の最低原子価と鉄(Fe)の最高原子価とが共存する。原産地は高い変成度の広域変成岩中の層状硫化鉄鉱鉱床。堆積岩(たいせきがん)中のウラン・バナジウム鉱床の非酸化部中に微量成分をなす。バナジウムに富む堆積岩を母岩とする無煙炭質瀝青(れきせい)物質中に含まれる。日本での産出は未報告。
共存鉱物は原産地では磁硫鉄鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱、石墨、チタン石、透閃石(とうせんせき)、石英など。同定は肉眼的な大きさのものがほとんどないので、観察同定に足る情報が十分ではないが、黒色亜金属光沢、条痕(じょうこん)黒、非常に高い硬度という性質が本鉱のようにそろっている鉱物はないため、これらの特性は参考になる。命名は原産地オウトクンプOutokumpu鉱山を含むフィンランド地方の古名カレリアKareliaにちなむ。
[加藤 昭 2016年2月17日]