翻訳|hematite
鉄の鉱石鉱物の一つ。磁赤鉄鉱とは同質異像関係にある。堆積(たいせき)岩、あるいはその変成産物として産し、巨大な鉱床を形成するほか、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)、各種熱水鉱床、鉱床酸化帯、ある種の火山岩、低変成度の広域変成岩、花崗(かこう)岩質ペグマタイトやチャートの着色成分として産する。自形は六角板状あるいは短柱状である。堆積岩中では、腎臓(じんぞう)状あるいは魚卵状集合をつくる。日本では、岩手県和賀仙人(わがせんにん)鉱山(閉山)、新潟県新発田(しばた)市赤谷(あかたに)鉱山(閉山)などで鉱石として採掘された。英名は、ギリシア語で血赤色を意味するヘマチチスにちなむ。これはその条痕(じょうこん)が赤色であることによる。なお、結晶面のよく発達したものを鏡鉄鉱、底面に平行な裂開が発達したものを雲母(うんも)鉄鉱ということがある。また、これらをまとめて輝鉄鉱とよんだこともある。赤色の顔料として用いられる。
[加藤 昭 2017年8月21日]
赤鉄鉱
英名 hematite
化学式 Fe2O3
少量成分 Mn,V,Sn
結晶系 三方
硬度 5~6
比重 5.26
色 鋼灰(結晶)、赤(粉末)
光沢 金属(結晶)、土状(粉末)
条痕 暗赤
劈開 無。底面に平行に裂開
(「劈開」の項目を参照)
磁鉄鉱とともに鉄の重要な鉱石鉱物。化学組成Fe2O3。六方晶系。板状,菱面体,塊状,柱状,腎臓状,鍾乳石状のもの,また土状のものもある。扁平な板状結晶は金属光沢が強く,はがね色を呈し,鏡鉄鉱と呼ばれる。粉状のものは赤褐色土状。モース硬度5~6,比重5.26。条痕は赤色ないし赤褐色。赤鉄鉱の主要な産状は次の通りである。(1)アメリカのスペリオル湖地域やアパラチア山脈などに発達する大規模な赤鉄鉱鉱層は堆積鉱床で,含水鉄酸化物,鉄炭酸塩,磁鉄鉱,鉄ケイ酸塩などを伴う。(2)火成岩中に少量含まれる。(3)火山ガスの昇華物として(イタリアのベスビオ火山)。(4)広域変成作用をうけた堆積岩はしばしば多量の赤鉄鉱を含む(中国東北地区の鞍山,ブラジルのイタビラ)。(5)接触交代鉱床および熱水鉱床の一種に赤鉄鉱を産するものがある(岩手県和賀仙人鉱山,新潟県赤谷鉱山)。
執筆者:津末 昭生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ヘマタイトともいう.化学組成はα形の酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3である.結晶系は六方晶系で,モース硬さ 5.5~6.5.密度4.9~5.3 g cm-3.色は赤褐色ないし黒.化学沈殿鉱床,接触鉱床,交代鉱床などとして産出することが多い.産出に際し,少量のFeOやTiO2を含むことがある.鉱石の外観から輝鉄鉱(鏡鉄鉱),雲母鉄鉱,マータイト,代しゃ石,魚卵状赤鉄鉱,繊維状赤鉄鉱,ち密赤鉄鉱などに区別される.ち密赤鉄鉱は鉄鋼原料として使用される.輝鉄鉱は金属光沢をもち,鋼灰色で鏡のように輝き,装飾品として用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…通常は高炉内に投入して酸化鉄に結合している酸素とその他の脈石分を取り除き,鉄分を溶けた状態の銑鉄として取り出し鋼の原料とする。鉄鉱石を鉱物学の観点から分類すると多種類にのぼるが,製鉄原料として用いられる天然鉱物は赤鉄鉱(ヘマタイト,α‐Fe2O3),磁鉄鉱(マグネタイト,Fe3O4),磁赤鉄鉱(マグヘマイト,γ‐Fe2O3),褐鉄鉱(リモナイト,Fe2O3・nH2O,n=0.5~4)に代表される。とくに赤鉄鉱の産出量が全世界的にみて圧倒的に多く,日本への輸入鉄鉱石の中でもその約80%を占めている。…
※「赤鉄鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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