ガロディ(読み)がろでぃ(その他表記)Roger Garaudy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガロディ」の意味・わかりやすい解説

ガロディ
がろでぃ
Roger Garaudy
(1913―2012)

フランスマルクス主義哲学者マルセイユに生まれ、ソルボンヌ大学文学部哲学科で学位を取得し、クレルモン・フェラン大学講師、ポワチエ大学教授などを歴任。その一方、1933年の入党以降フランス共産党員として活動し、同党選出の県議会議員、国民議会上院議員などを歴任。またフランス共産党の政治局員や中央委員として長らくイデオロギー部門における指導的地位を占めた。しかし、1968年の「プラハの春」(チェコにおける民主化運動)とそれへのソ連の軍事弾圧の評価をめぐって、ソ連寄りのフランス共産党中央と対立。1970年の第19回党大会で「右翼修正主義者」として中央委員、政治局員を解任され、離党マルクス主義の立場から現代の観念論哲学を批判する著作を数多く発表したが、ことに道徳宗教に関心が深く、マルクス主義をヒューマニズム貫徹、人間の全体性の回復、という観点から位置づけようと試みた。この点で、同じくフランス共産党内の異端的グループを代表した哲学者のアルチュセールらとはまったく異なる。離党後は宗教への傾斜を深め、イスラム教に改宗スペインコルドバのガロディ文化センター財団理事長(1986~1990)などの活動を続けつつ、現代のパレスチナ紛争に関連して反イスラエルの立場から発言した。1998年に公刊した書物で、「ナチスのユダヤ人ジェノサイド」が極右シオニストらによる政治的誇張(神話)である旨の主張をしたかどで、パリ軽犯裁判所にて有罪判決を受けた。主著に『実存主義カトリック、マルクス主義における人間観』(1960)、『マルクス主義の道徳』(1963)、『社会主義の偉大な転換』(1969)などがある。

[古茂田宏]

『ロジェ・ガロディー他著、加藤九祚訳『実存主義批判』(1955・青木書店)』『淡徳三郎訳『自由』上下(1956・青木書店)』『森宏一訳『認識論』上下(1956・青木書店)』『ロジェ・ガロディー他著、根岸良一・多田正行訳『反マルクス主義批判』(1957・パトリア)』『平田清明訳『近代フランス社会思想史』(1958・ミネルヴァ書房)』『竹内良知訳『20世紀マルクス主義』(1968・紀伊國屋書店)』『海野洋訳『対話の価値――新しい社会主義のために』(1968・サイマル出版会)』『内山敏訳『21世紀の社会主義』(1970・読売新聞社)』『野原四郎訳『現代中国とマルクス主義』(1970・大修館書店)』『ロジェ・ガロディ、クロード・グレイマン著、竹内良知訳『マルクス主義の新しい展開――ガロディとの対話』(1973・番町書房)』『末永照和訳『ピカソ――反抗の弁証法』(1973・審美社)』『岩崎力訳『人間の言葉』(1978・新潮社)』『末永照和訳『カフカ――岸辺なきレアリスム』新装版(1980・思潮社)』『木村愛二訳『偽イスラエル政治神話』(1998・れんが書房新社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ガロディ」の意味・わかりやすい解説

ガロディ
Roger Garaudy
生没年:1913- 

フランスの哲学者。ソルボンヌに学ぶ。1933年,共産党に入党,56年から党政治局員としてイデオロギー部門を担当(1968年まで),マルクス=レーニン主義を強硬に擁護したが,スターリン批判後はマルクス主義哲学の再生に努め,社会主義への新しい道を求めて宗教をはじめ広く文化の問題に取り組み,70年党から除名される。《20世紀のマルクス主義》をはじめとして,後期の著作の多くは日本にも紹介されている。
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