家庭医学館 「がんの進行」の解説
がんのしんこう【がんの進行】
がんは一般に、早期(そうき)がん、進行(しんこう)がん、末期(まっき)がんの3段階に大別されます。
がん細胞は、1個が2個に、2個が4個に、4個が8個にというように、分裂をくり返して増殖していきますが、早期がんとして発見できる大きさになるまでには30回以上の分裂をくり返し、10~20年はかかるといわれています。そのうち、ごく初期に見つけられる小さながんは初期(しょき)がんまたは微小(びしょう)がんと呼ばれ、早期治療で完全に治すことが可能です。
●前(ぜん)がん状態(じょうたい)
がんとは認められないが、そのまま放置するとがん化する確率の高い状態を、前がん状態といいます。大腸(だいちょう)ポリープ、胃粘膜(いねんまく)の腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)や異型上皮(いけいじょうひ)、舌の白板症(はくばんしょう)、皮膚にできる日光角化症(にっこうかくかしょう)などがその例です。
これらの病変がみられた場合は、定期的に検査を受けることが必要です。
●早期がんから進行がん、末期がんへ
がんの進行状態がどの時期にあるかは、臓器ごとに病像が大きくちがうので、それぞれ個々に決められます。
胃がんの場合、まず、胃壁の内側表面の粘膜層(ねんまくそう)にがんが発生し、数年間はそこにとどまっていますが、少しずつ大きくなり、やがて粘膜下層(ねんまくかそう)にまで広がります。ここまでが早期がんです。この段階でがんを切除すれば、ほとんどが治ります。さらに下層の固有筋層(こゆうきんそう)に達すると、転移(てんい)や浸潤(しんじゅん)が増え、胃の内腔(ないくう)にも増殖して盛り上がってきます。これが進行がんです。
がん細胞が固有筋層より下層の漿膜(しょうまく)(臓器のいちばん外側を包む膜)に侵入し、漿膜表面にまで達するようになると、腹膜(ふくまく)に転移してがん性腹膜炎をおこしたり、肝臓や肺、リンパ節に転移したりします。こうなると、全身状態は非常に悪い状態に陥(おちい)り、手術も不可能となります。これが末期がんです。
◎がんの病期分類と判定
がんの病期(進行の程度や広がり)をいろいろな検査の結果から分類する方法は、各国で共通の基準として用いられています。がんを適切に治療するには、事前にがんの病期を正確に診断しておくことも必要です。
●TNM分類
国際的によく用いられている分類方法で、臨床所見(りんしょうしょけん)(診察によってわかる情報)やX線検査その他のいろいろな特殊検査の結果から病期を判定するものです。
Tは原発腫瘍(げんぱつしゅよう)の大きさ、広がり、深さを、Nは周囲のリンパ節への転移の程度を、Mは他の臓器への転移の有無を表わし、それぞれ、進行の段階別に分けて判定され、それらの結果を総合して病期が決められます。
1期(早期がん)、2期(軽症がん)は完全に治るもの、3期(中期がん)、4期(進行がん)は将来を考慮した治療の選択が必要なものとされます。
●その他の分類法
病期(ステージ)分類、WHO(世界保健機関)組織分類、学会分類などがあり、いずれも、検査によってがんの組織の型を決定したうえで、進行の程度が判定されます。