日本大百科全書(ニッポニカ) 「がん研究会」の意味・わかりやすい解説
がん研究会
がんけんきゅうかい
「がんの撲滅をもって人類の福祉に貢献すること」を基本理念とする公益財団法人。がん研究所、附属病院(有明病院)、がん化学療法センター、ゲノムセンター、健診センター、臨床試験・研究センター、細胞検査士養成所などを設置し、癌(がん)に関する基礎と臨床研究、治療、制癌剤の開発、予防知識の普及、教育指導、研究の奨励と研究費の助成を精力的に行っている。
癌に取り組む専門機関としては日本最古の歴史をもち、創設は1908年(明治41)4月。直接の動機は、当時ドイツ中央癌調査会が中心になって結成された国際癌研究協会に加盟を勧誘されたこと。国際共同研究という20世紀に入って初めて登場した新しい思想に応じて、学界、政界、財界一体の構想が打ち出され、初代総裁桂(かつら)太郎、副総裁渋沢栄一、会頭青山胤道(たねみち)の陣容で「癌研究会(当初の名称)」が発足した。日本病理学会と合同で学術集談会を開催、また懸賞論文規程をつくり研究を助成、東京帝国大学病理学教授山極勝三郎の主宰する学術雑誌『癌』を1914年(大正3)から本会機関誌として継承した。1929年(昭和4)天皇から恩賜金1万円が下賜され、各方面の寄付とともに、癌研究所と附属病院(康楽病院)が1934年に完工、急速に発展を遂げた。1941年会頭長与又郎(ながよまたろう)の尽力で「日本癌学会」が設立され、第二次世界大戦後の1958年(昭和33)には会頭塩田広重(ひろしげ)が新設の財団法人日本対ガン協会(現、公益財団法人対がん協会)の初代会長に就任、癌研究会、日本癌学会、対ガン協会の三者協力体制で癌制圧を図ることになった。現在、国際対がん連合や日米がん研究協力事業にも委員を出し、広く対外的に研究交流を実施している。2011年(平成23)公益財団法人に移行し、「癌研究会」から「がん研究会」に名称変更。所在地は東京都江東(こうとう)区有明(ありあけ)3-8-31。
[本田一二]