改訂新版 世界大百科事典 「キシャヤスデ」の意味・わかりやすい解説
キシャヤスデ
Parafontaria laminata armigera
倍脚綱オビヤスデ目ババヤスデ科のヤスデ,オビババヤスデの1亜種。本州中部地方の山岳部で数年に一度大発生し,線路上に現れて列車の運行を妨害したところからこの名がある。オビババヤスデは体長約3~3.5cmで,胴節数20個。無眼。背板は赤褐色でその各後縁に暗色横帯がある。小海線沿線では開通以来何度も大群による妨害が秋季にあったが,中央本線や北陸本線も被害にあっている。本州中部の森林地帯におもに分布し,初夏に交尾産卵する。1雌の産卵数は数百個でその夏孵化(ふか)して3対肢をもつ1齢幼虫になる。その後毎年夏に一度ずつ脱皮し,7幼虫期を経て8年目の夏に成体となり,秋季に群集して地表に現れると推定されている(大発生8年周期説)。群集の密度は1m2当り50~200個体で,過去に小海線沿線のみで200億個体以上と推定されたことがある。列車妨害で注目されるが,落枝落葉の土壌化には大きな働きをしており,害虫ということはできない。
執筆者:篠原 圭三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報