改訂新版 世界大百科事典 「キヌバリ」の意味・わかりやすい解説
キヌバリ (絹張)
serpentine goby
Pterogobius elapoides
スズキ目ハゼ科の海産魚。東北以南にふつうに見られる。神奈川県三崎ではキノバルと呼ばれる。体色が美しいところから絹張の名を与えられた。体色は桃色がかった淡灰色で,眼を通る1条を含めて体側に黄色に縁取られた6~7条の垂直な黒褐色横帯があり,鮮やかで識別が容易である。背びれ,しりびれ,尾びれは暗紅色を呈する。胸びれ上部の数軟条は遊離して絹糸状になる。うろこは小さい円鱗で側線はない。体長11cmほどに達する。幼期には群れをなすが,ふつう,内湾の藻場,磯などに群れをつくらずに単独で生息する。ときどき藻場から離れて中層を遊泳することもある。産卵期は12~3月で,長径2.2~2.4mm,短径0.7~0.9mmの付着卵を約1500個産む。観賞魚向きであるがあまり食用にしない。南にすむものほど体側の垂直横帯の数が少なくなり,尾部のほうの横帯が斑状になる傾向がある。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報