改訂新版 世界大百科事典 「キベリタテハ」の意味・わかりやすい解説
キベリタテハ
Nymphalis antiopa
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。イギリスではCamberwell beauty,アメリカではmourning cloakと呼ばれる。中型のタテハチョウで開張は7cm内外。雌は雄より少し大きく翅に丸みがある。翅の表面は濃いチョコレート色で,外縁に淡黄色の帯があるためこの名がついた。北半球に広く分布し,日本では本州中部以東と北海道に産する。本州ではシラカバ,ダケカンバのある1000~2000mの地帯にすむが,北海道では低地でも見られ,露岩地や地表に止まる。7月末から8月中・下旬に発生する。雌は6月上・中旬,ダケカンバ(北海道ではオオバヤナギにも)の小枝に,150~200個の橙黄色の卵を隙間なく一層に産むが,枝の全周に産むことはない。幼虫は終齢まで群れて生活し,老熟幼虫は食樹を去って蛹化(ようか)。空洞,岩や材木の隙間などで成虫で越冬。越冬後の成虫は翅の外縁が白くなる。北アメリカには年2回発生する亜種があり,食樹も多様。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報