改訂新版 世界大百科事典 「キンチャクダイ」の意味・わかりやすい解説
キンチャクダイ (巾着鯛)
スズキ目キンチャクダイ科Pomacanthidaeの海産魚の総称,またはそのうちの1種。本科の魚はいわゆるサンゴ礁魚類であり,色彩が鮮やかで美しいため,観賞魚として喜ばれ,近年盛んに飼育されている。幼期には成魚とまったく異なった斑紋をしているため,別種として扱われていたものが多い。キンチャクダイ類は前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隅の角の部分に強い1本のとげのあることが特徴で,近縁のチョウチョウウオ類と区別される。
キンチャクダイChaetodontoplus septentrionalisは,温帯に適応した種で,相模湾以南から台湾などに分布し,本州沿岸でも繁殖している。やや深い岩礁域にすむ。産卵期は7~9月で,球形の浮性卵を産む。幼魚は体色が黒褐色で,眼の後方に1本の黄色線があるほか,背びれとしりびれの後縁および尾部が黄色であり,ハクセンキンチャクダイと呼ばれていた。成魚は黄褐色の地色に10本前後の暗青色縦線があるが,この線は分枝したり,点になったり変異が多い。
執筆者:望月 賢二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報