改訂新版 世界大百科事典 「キンヒドロン」の意味・わかりやすい解説
キンヒドロン
quinhydrone
キノン1分子とヒドロキノン1分子から構成される化合物の総称であるが,しばしば単にp-ベンゾキノンとヒドロキノン(1,4-ジヒドロキシベンゼン)から生ずる化合物(次式)をさす。
この化合物は緑色あるいは金属光沢をもつ昇華性の結晶で,融点171℃。エチルアルコール,エーテルに溶けて黄色溶液となる。水にはほとんど溶けず,脂肪族炭化水素にはまったく溶けない。酸化剤の作用でキノンに,還元剤の作用でヒドロキノンとなる。
一般にキンヒドロンは,キノンおよびヒドロキノンのアルコール溶液を混合すると不溶性の緑色ないし青緑色の結晶として析出する。キノンを不完全に還元するか,ヒドロキノンを不完全に酸化することによって得られる。多くのキンヒドロンは,結晶の場合にのみ両成分の分子化合物として存在し,溶液中では一般にほぼ完全にキノンとヒドロキノンに解離している。キノン類はヒドロキノン以外にフェノール,チオフェノールなどとも類似の分子化合物を生じ,この場合には,両者の比は1:2である。キンヒドロンの飽和水溶液に白金線を入れたものはキンヒドロン電極と呼ばれ,水素イオン濃度の測定に用いられる。
執筆者:岡崎 廉治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報