日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンゾキノン」の意味・わかりやすい解説
ベンゾキノン
べんぞきのん
benzoquinone
ベンゼン環上の水素2原子を酸素で置き換えた構造をもつ化合物。キノンの一種であり、o(オルト)-ベンゾキノンとp(パラ)-ベンゾキノンの2種類の異性体がある。
o-ベンゾキノンは不安定な赤色結晶で、ベンゼン、エーテル、アセトンに溶ける。
p-ベンゾキノンは、アニリン、p-フェニレンジアミン、フェノールなどを酸化すると得られる。代表的なキノンで、単にキノンというとこの化合物をさす。
キナノキの樹皮などに含まれているヒドロキシ酸であるキナ酸を酸化すると得られることが、古くから知られていたので、キナ酸の名にちなんでキノンの名が与えられた。黄色の刺激臭をもつ固体で昇華性がある。熱石油エーテル、アルカリ水溶液には溶けるが、水には溶けにくい。容易に還元されてヒドロキノンになる。酢酸ビニル、スチレンなどの重合反応を停止させるので重合抑制剤になる。ほかに染料合成、皮なめしなどの用途をもつ。
[廣田 穰 2016年2月17日]