ベンゾキノン(読み)べんぞきのん(英語表記)benzoquinone

翻訳|benzoquinone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンゾキノン」の意味・わかりやすい解説

ベンゾキノン
べんぞきのん
benzoquinone

ベンゼン環上の水素2原子を酸素で置き換えた構造をもつ化合物キノンの一種であり、o(オルト)-ベンゾキノンp(パラ)-ベンゾキノンの2種類の異性体がある。

 o-ベンゾキノンは不安定な赤色結晶で、ベンゼン、エーテルアセトンに溶ける。

 p-ベンゾキノンは、アニリンp-フェニレンジアミン、フェノールなどを酸化すると得られる。代表的なキノンで、単にキノンというとこの化合物をさす。

 キナノキ樹皮などに含まれているヒドロキシ酸であるキナ酸を酸化すると得られることが、古くから知られていたので、キナ酸の名にちなんでキノンの名が与えられた。黄色の刺激臭をもつ固体昇華性がある。熱石油エーテル、アルカリ水溶液には溶けるが、水には溶けにくい。容易に還元されてヒドロキノンになる。酢酸ビニルスチレンなどの重合反応を停止させるので重合抑制剤になる。ほかに染料合成、皮なめしなどの用途をもつ。

[廣田 穰 2016年2月17日]


ベンゾキノン(データノート)
べんぞきのんでーたのーと

ベンゾキノン
o-ベンゾキノン

 分子式 C6H4O2
 分子量 108.1
 融点  60~70℃(分解
 沸点  213.3℃
 密度  1.256g/cm3(20℃)

p-ベンゾキノン

 分子式 C6H4O2
 分子量 108.1
 融点  115.5℃
 沸点  (昇華)
 密度  1.318g/cm3(20℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベンゾキノン」の意味・わかりやすい解説

ベンゾキノン
benzoquinone

ベンゼンから誘導される化合物で,化学式 C6H4O2o 体と p 体とがある。 p-ベンゾキノンは単にキノンとも呼ばれる。刺激臭のある昇華性の黄色結晶。融点 116℃。アニリンを硫酸酸性で二クロム酸塩によって酸化するか,ヒドロキノンの酸化によって生成する。亜硫酸によってヒドロキノンに還元されるので,その製造原料となる。また,染料や皮革のなめしにも利用されるが,毒性が強いので注意が必要である。 o 体は暗赤色,分解点 60~70℃の結晶。ピロカテキンの酸化によって得られるが,p 体ほど重要ではない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android