改訂新版 世界大百科事典 「ギョリュウ」の意味・わかりやすい解説
ギョリュウ
Chinese tamarisk
Tamarix chinensis Lour.
タマリクスともいう。水辺の湿った所に栽植され,高さ7mに達することもあるギョリュウ科の落葉低木あるいは小高木。枝は細く,時にはヤナギのように垂れ,披針形で長さ0.5~1cmの鱗片状の葉を多数つける。細い枝は落葉時に共に枯れ落ちる。花期は晩春と,夏から秋にかけての2回で,総状の花序に淡桃色の花が多数群がりつき,離れて見ると美しいし,春の明るい新芽や青緑色の夏のけむるような樹冠も優しい美しさがあり,切花や庭園樹として栽植される。原産地は,モンゴルから中国北部にかけての乾燥地域である。生育地は水湿地を好むが,乾燥地帯のものであるので,塩分に強く,耐寒性もあり,花木だけでなく,海岸の防風林にも利用される。また,日本には〈はしか〉の薬として18世紀に導入されたように,中国では薬用とされ,利尿,解毒,風邪などにも用いられる。繁殖は挿木あるいは種子による。
ギョリュウ属Tamarixは地中海域からアジアにかけての乾燥地帯に75種あまりが分化しており,欧米で数種が庭園樹や生垣に利用されている。ギョリュウ属の果実は長毛を有する多数の種子を生じ,風散布し,水湿地に落ちると毛が地表に付着し定着発芽するというヤナギと同じような種子の散布様式を有し,花もヤナギと同じように退化的である。材や花の特徴からは,この両者は系統的にも近縁と考えられる。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報