クマムシ(読み)くまむし(英語表記)water-bear

共同通信ニュース用語解説 「クマムシ」の解説

クマムシ

8本の脚を持つ体長1ミリ未満の動物。約1200種が知られ、市街地深海、山などに幅広く生息する。陸上に生息する種は乾燥すると縮まって「乾眠状態」となり、水分を得ると活動を再開する。乾眠状態では真空や、100~零下273度までの厳しい環境に耐えられる。欧州宇宙機関実験では、乾眠状態のクマムシを10日間宇宙空間に直接さらした後、地上で水を加えると再び活動した。南極で採取され、約30年間凍っていたクマムシが水を与えられて復活し、産卵した例もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クマムシ」の意味・わかりやすい解説

クマムシ
くまむし / 熊虫
water-bear

緩歩(かんぽ)動物門の動物の総称。体長1ミリメートル以下の微小動物ではあるが、体形や歩くようすがクマを思わせるのでこの名がある。陸上の湿ったコケ類や森林の落葉土中などに多いが、湖沼海中にすむ種も知られている。熱帯地域では種数、個体数とも少なく、反対に高緯度地域ほど多い。そのうえ世界共通種が多い。

 多細胞動物としては最小の部類に属し、体は透明で、円筒形。体表はクチクラで覆われ、外見上体節が不明瞭(ふめいりょう)な真緩歩目と、はっきりしている異緩歩目に分けられる。いずれも4対の歩脚をもち、それらの先端にはつめをもつ。口には石灰質の2本の歯針がある。ほとんどの種は草食性であり、歯針で植物に穴をあけ、吸引力の強い咽頭(いんとう)で細胞液を吸い込む。陸上のクマムシ類は乾燥すると体を縮めてボール状になり、いわゆる乾眠をする。数年間このような仮死状態にあっても、湿気に出会うと蘇生(そせい)する。乾眠個体の生命力の強さは各種の実験で証明されている。たとえば、100℃の塩水中で6時間、92℃の水で1時間、零下252.8℃の液体水素中でも26時間死なないという報告がある。また、紫外線の1時間照射や、細菌には致死量の放射線をも、クマムシは耐えることができる。水中のクマムシ類は、酸素不足や炭酸ガスの増加によって、初めはボール状に、やがて伸長して仮死状態になる。これは1日か、長くても5日ほどしか蘇生力がないが、被嚢(ひのう)を形成した場合は数か月も蘇生力をもつことがある。

 雌雄異体で、寿命は3か月ないし2年半くらいである。一生の間に4回ないし12回脱皮し、体細胞の拡大によって成長する。真緩歩目に属するチョウメイムシMacrobiotus intermediusやナガチョウメイムシM. hufelandiiはコケ類などの中に、マミズクマムシHypsibius augustiは池沼の藻類中にごく普通にみられ、世界中に分布する。異緩歩目のトゲクマムシEchiniscus spinigerはコケの中に、イソトゲクマムシEchiniscoides sigismundiは世界各地の磯(いそ)のアオノリの間にすんでいる。

[武田正倫]


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