無脊椎動物の一門Tardigrada。動物の体の感じや動作がクマに似ているところからクマムシ門ともされている。環形動物と節足動物とを結ぶ動物の一つであって,節足動物へ進化していく途中で退化した一群と考えられる。世界に約700種が知られている。
淡水や海水のほか,湿気のある土地やコケの中にもすむ。体長は1mm以下で,頭部と4節の胴部からなる。体表は薄くてじょうぶなキチン質のクチクラで覆われているが,クチクラに種々の微細構造が見られる。胴部には4対の短いあしがあり,その先端にかぎのように湾曲したつめをもつものと,粘着葉をもつものとがある。口は体の前端か,前方の腹側に開く。咽頭(いんとう)には2本の石灰質の歯針があり,これを口から突出させて植物の細胞液を吸う。消化管は短く,肛門は第4脚の間,または腹側に開いている。雌雄異体で,腸の背側に卵巣か精巣がある。卵の表面にはとげや彫刻があり,産み出された卵は他物に付着する。しかし,脱皮した殻の中に産卵する場合があり,そのような卵は表面が滑らかである。卵内で親の体の1/4~1/5の大きさまで成長し,その後孵化(ふか)する。脱皮を繰り返して成長するが,一生の間に4~12回の脱皮を行う。大部分のものは植物の細胞液を吸うが,なかにはセンチュウ類やワムシ類を食べるものもある。環境が乾燥すると,体を収縮してボール状になり,特別な保護膜をつくって乾眠(かんみん)(超休眠ともいわれる)する。このような状態を10年以上も続けた例がある。水にもどすと再び活動を始める。
イソトゲクマムシEchiniscoides sigismundiは海岸に生えている短い綿毛状のアオノリの間に生息する。ナガチョウメイムシMacrobiotus hufelandiiは体長1.2mmになる大型種で,淡水中やコケの中にすみ,世界各地に分布している。マミズクマムシHypsibius augustiは池や泥,地下水などに生息する。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物分類学上、緩歩動物門Tardigradaを形成する動物群。体長1ミリメートル以下の微小動物で、湿ったコケや森林の落葉土中などにすむほか、淡水中や海水中にすむものもある。形態や歩く動作がクマを思わせるところからクマムシとよばれる。世界に約370種、日本からは約30種が記録されている。かつては節足動物門の1綱とされていたが、現在では節足動物への進化の途中で退化した動物群と考えるのが一般的である。体節構造をもつことなどから環形動物門に類縁関係をもつものと推定される。舌形動物門、有爪(ゆうそう)動物門とともに、体制の分化が同程度ということから側節足動物としてまとめられることがある。
[武田正倫]
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