クラシツキ(読み)くらしつき(英語表記)Ignacy Krasicki

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラシツキ」の意味・わかりやすい解説

クラシツキ
くらしつき
Ignacy Krasicki
(1735―1801)

ポーランド啓蒙(けいもう)期の詩人、小説家。没落した伯爵家の生まれで、牧師となり、1795年からはグニェズノ大司教となった。古代文学フランス古典主義を受け継ぐ作風はとくに明快で、構成も緻密(ちみつ)である。コミカルな物語詩や風刺詩ではポーランド士族の習慣が暴かれている。『ミコワイ・ドシビャトチンスキの冒険』(1776)は風俗・冒険小説にユートピア的要素を結び付けたポーランド近代小説の最初の作品であり、また『パン・ポドストーリ』(1778)は風俗誌的な教訓小説である。ほかに『寓話(ぐうわ)とたとえ話』(1779)などがあり、ポーランド文語の発展に貢献した。

[吉上昭三]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラシツキ」の意味・わかりやすい解説

クラシツキ
Krasicki, Ignacy

[生]1735.2.3. ドゥビェツコ
[没]1801.3.14. ベルリン
ポーランドの詩人。カトリック大司教。散文『ミコワイ・ドシフィアッチンスキの冒険』 Mikołaja Doświadczyńskiego przypadki (1776) はポーランド最初の近代小説とされ,国民的啓蒙文学の確立に大きな役割を果した。古代詩とフランス古典主義を受継ぐその詩は,優雅なスタイル,美しく明快な言葉で綴られている。詩の代表作は『寓話とたとえ話』 Bajki i przypowieści (79) 。

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