クラショー(読み)くらしょー(英語表記)Richard Crashaw

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラショー」の意味・わかりやすい解説

クラショー
くらしょー
Richard Crashaw
(1613?―1649)

イギリスの形而上派詩人メタフィジカル・ポエット)、宗教詩人。J・ダンの形而上詩などに比べ内面の緊張や哲学的錯綜(さくそう)の深さに欠けるといわれることもあるが、イギリス文学ではバロック感覚を最大限に示す詩人である。そのイメージはカトリックの伝統に深く根ざし、十字架にかけられたキリストを想(おも)って涙するマグダラマリアを「かの女(ひと)は燃える噴水か、はてまた涙する炎か」と形容し、涙の尽きない彼女の両の眼を「二つの歩く浴槽、二つの涙の動き/携帯用の簡便な二つの大海原」(詩「涙する人」から)と表現するように、感覚的、官能的な、身ぶりの大きいイメージを重厚に積み重ねて、カトリックの法悦境を歌い上げた。

[河村錠一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラショー」の意味・わかりやすい解説

クラショー
Crashaw, Richard

[生]1613頃.ロンドン
[没]1649.8.21. イタリア,ロレト
イギリスの形而上詩人ケンブリッジ大学に学び,1635年フェローの地位を得,国教会派の聖職についたが,内乱 (1642~51) により,43年ケンブリッジを去った。以後オランダ,フランスに亡命生活をおくり,カトリックに改宗。 49年ローマ教会に地位を得,任地ロレトにおもむくが,まもなく没した。詩集に『聖なる警句』 Epigrammatum Sacrorum Liber (34) ,『聖堂への歩み』 Steps to the Temple with the Delights of the Muses (46,48増補) ,『わが神に捧げる歌』 Carmen Deo Nostro (52,死後出版) など。バロック的要素の濃い作品が多い。

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