日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラショー」の意味・わかりやすい解説
クラショー
くらしょー
Richard Crashaw
(1613?―1649)
イギリスの形而上派詩人(メタフィジカル・ポエット)、宗教詩人。J・ダンの形而上詩などに比べ内面の緊張や哲学的錯綜(さくそう)の深さに欠けるといわれることもあるが、イギリス文学ではバロック感覚を最大限に示す詩人である。そのイメージはカトリックの伝統に深く根ざし、十字架にかけられたキリストを想(おも)って涙するマグダラのマリアを「かの女(ひと)は燃える噴水か、はてまた涙する炎か」と形容し、涙の尽きない彼女の両の眼を「二つの歩く浴槽、二つの涙の動き/携帯用の簡便な二つの大海原」(詩「涙する人」から)と表現するように、感覚的、官能的な、身ぶりの大きいイメージを重厚に積み重ねて、カトリックの法悦境を歌い上げた。
[河村錠一郎]