カトリシズム(その他表記)Catholicism

翻訳|Catholicism

デジタル大辞泉 「カトリシズム」の意味・読み・例文・類語

カトリシズム(Catholicism)

《「カソリシズム」とも》
ローマ教皇を最高首長と仰ぐローマ‐カトリック教会の宗教的、思想的な立場。カトリック主義。
政治・経済・社会・文化などでの、カトリックの立場に基づく活動の総称。

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精選版 日本国語大辞典 「カトリシズム」の意味・読み・例文・類語

カトリシズム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] Catholicism )
  2. ローマ教皇を最高首長とするカトリック教会の宗教的思想的立場。キリストの神性を絶対的なものと認め、信仰の起点とする。カトリック主義。
    1. [初出の実例]「その凡ゆる苦痛にも拘らず、常にカトリシスムの最後の勝利を堅く信じて」(出典:流言蜚語(1937)〈清水幾太郎〉二)
  3. 政治、経済、社会、文化などのカトリック的活動の総称。
    1. [初出の実例]「『主は現代の停車場にも、劇場にもある』といった、韻致カソリシズムの象徴かと桂子は想ふ」(出典:花は勁し(1937)〈岡本かの子〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「カトリシズム」の意味・わかりやすい解説

カトリシズム
Catholicism

カトリック信仰にもとづく世界観もしくは思想体系。〈カトリシズム〉という言葉は,プロテスタンティズム,およびギリシア正教にたいして,カトリック的キリスト教あるいはローマ・カトリック教会の教えそのものを意味する場合もあるが,ここでは今日のより一般的な慣用に従って,カトリック教会の教え,つまり信仰内容と内面的に結びついてはいるが,それから区別された文化的,思想的営みの意味に解する。この意味でのカトリシズムは,世俗的な自由主義・個人主義,反宗教的なマルクス主義と対決する〈イデオロギー〉と解されることもある。〈イデオロギー〉としてのカトリシズムは,人間中心的であるよりはむしろ神中心的であり,進歩よりはむしろ伝統を優先させ,個人の自由で多様な表現や創意よりはむしろ画一的な教義や不変の権威を重視する,との印象を与えがちで,保守反動的,権威主義的な思想として批判されることが多い。〈カトリックcatholic〉が〈普遍的〉を意味するギリシア語katholikosから来た言葉であることを想起するとき,カトリシズムのこのような〈特殊性〉〈党派性〉にたいする批判は歴史の皮肉とも感じられる。じっさいに〈カトリック〉という言葉は〈一〉〈聖〉〈使徒伝来的〉などとともに,地域,時代,民族,人種その他すべての人間的条件にもとづく特殊性を超え出る,教会の〈普遍性〉というしるしを指示するために用いられてきた。しかし,その場合でも教会の〈カトリック性〉とは,万人に救いをもたらすキリストの〈普遍性〉にもとづく可能性であって,それが完全に実現されるのはただ世の終りにおいてであることが承認されていた。まして歴史的偶然性の制約の下にある人間の文化的,思想的営みとしてのカトリシズムが,最終的な〈普遍性〉を実現もしくは要求しえないことはいうまでもない。

 だがカトリシズムの〈カトリック性〉は思想内容を指示する言葉として理解することも可能である。それは,日常的経験,科学的探求,神秘的観想,神的啓示など,いかなる経路,方法を通じて到達されたものであろうと,およそすべての真理にたいしてみずからを根元的に開こうとする態度を核心とするところの思想であり,一言でいえば〈超越〉の思想である。〈神の死〉を自明の前提とする〈内在主義〉--唯物論観念論進化論,自然主義の諸形態をふくめて--が人間を最高の存在へたかめるのにたいして,カトリシズムは人間が〈創られたもの〉〈神のかたどり〉であることの自覚から出発し,そこに人間の卑小と偉大,悲惨と栄光を読みとる。万物は神を離れては虚無であるが,全宇宙のなかで人間だけがそのことを自覚する能力をもち,この能力が人間を超越者たる神との合一にいたるまでやむことのない探求へとかりたてる。しかしこの合一は根本的に神の恩寵によるものであり,人間の本性そのものである〈超越への能力〉は〈恩寵受容性〉にほかならない。この意味での〈超越〉を証言し,弁証するところに現代思想としてのカトリシズムの意義がある。
キリスト教
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カトリシズム」の意味・わかりやすい解説

カトリシズム
Catholicism

カトリック主義ともいい,主として次の3つの意味がある。 (1) 「普遍的,全体的」というカトリックの原意から,時間的には初期教団からの伝統を総括し,空間的には全世界の人類を包含し,教理的には初期のすべての普遍公会議の信仰を完全に保持するのがキリストの真の教会であるとする立場。地域教会に対する世界教会,異端・離教に対する正統教会の意味でとらえられる。歴史的にはローマ帝国公認教会,つまり 1054年東西両教会が決定的に分裂する以前の教会の立場で,現在でも大部分のカトリック教会はそれぞれなんらかの意味でこの立場の継承者であることを主張している。 (2) 教皇がペテロの後継者として全教会に対し,単に名誉上だけではない法的な裁治権をもち,無謬権をそなえ政治権力をさえ有するとの考えのもとに,特に中世に発達した神学的・法的思想の総体。ギリシア正教主義やプロテスタンティズムに対立する概念としてとらえられる。この場合,ローマ・カトリシズムと呼ばれることが多い。 (3) アウグスチヌストマス・アクィナス政治哲学を根拠とし,特有の倫理観や自然法思想をもつ理念。原理的な意味から離れ,フランス革命以降,自由・平等の理念に反対し続けるという反動的役割を演じた。 J.メーストルや L.ボナールはその先駆者で,教権主義に基づく国家理念を鼓吹。次いで H.ラムネにいたって進歩思想への接近が行われたが,のちにドレフュス事件に際してカトリック教会は軍部,反ユダヤ主義者,大地主階級と結託して反動性を遺憾なく発揮した。やがて 20世紀に入ると,カトリシズムは自由放任的資本主義に反対するとともに共産主義無神論に対して妥協のない戦いを開始した。スペイン,ポルトガルなどのカトリック教会も,教権ファシズムと呼ばれる全体主義的政治理念によって労働者階級と対決する。近年,とりわけ第2バチカン公会議 (1962~65) 以後,ヨーロッパのカトリック思想界は反動性を脱却し,社会正義やヒューマニズムに基づく政治運動に理解を示しはじめたが,カトリック世界の内部では,このような教会当局の姿勢に満足せず,より一層の転換を求める解放の神学のような運動も現れている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カトリシズム」の意味・わかりやすい解説

カトリシズム
かとりしずむ
Catholicism

キリスト教の諸教派のうち、ローマ教皇の下に統一されているカトリック教会の体制、教義、またそこに理論的根拠をもつ思想などを一般的にさす。教皇の至上権を認めないプロテスタンティズムとの対立概念。ただしカトリック教会の公用語としては用いられないので、この立場からすれば、教会または信者の社会的、文化的活動の意味に限定される。

 思想としてのカトリシズムは、中世を通じてしだいに形成され、トマス・アクィナスによって古典的に完成された。神を頂点とし、すべての存在が神を目ざして運動するという神学的世界像、自然法思想、政治思想における共通善概念などがその特徴である。しかし、トマス思想は近代に入るとスコラ主義として硬化する。フランス革命以降、カトリシズムはしばしば反動思想となり、とくにマルクス主義成立以降は、無神論反対とも結び付いて強く反社会主義的であった。しかしラムネやラコルデールなどフランス19世紀の自由カトリシズム、20世紀初頭フランスやドイツでのネオ・トミズム(新トマス主義。とくに社会の階級分裂克服のために、トマス・アクィナスの共通善概念の意義を強調し、また社会と個人・人格の調和的発展を主張する法哲学および政治思想上の運動)などには、独自の社会批判とヒューマニズムがある。現代では第2回バチカン公会議(1962~65)以降の諸教会合同運動(エキュメニズム)への動き、ベトナム戦争以後の、日本も含めて各国教会内での人権と平和主義志向などもあり、カトリシズム全体としては保守的ではあるが、内部には多様性が目だっている。

[半澤孝麿]

『J・ダニエル、J・ホル、J・プーパル著、朝倉剛・倉田清訳『カトリック――過去と未来』(1981・ヨルダン社)』『K・v・アーレティン著、沢田昭夫訳『カトリシズム――教皇と近代世界』(1973・平凡社)』『糸永寅一他監修『ヨーロッパ・キリスト教史』全六巻(1970~72・中央出版社)』『上智大学宗教思想研究所編・訳・監修『キリスト教史』全11巻(1980~82・講談社)』

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百科事典マイペディア 「カトリシズム」の意味・わかりやすい解説

カトリシズム

ローマ・カトリック教会の教説と思想の総称。より正確に〈カソリシズム〉とも。カトリックの原義は〈普遍的・全体的〉で,正統信仰確立後のキリスト教の自称。東方正教会が離れ,プロテスタンティズムが出現したのち,それらとの対比で,聖職位階制や典礼の尊重,聖人崇拝,超越主義などを指標として用いられることが多い。〈神の死〉を語った,牧師の子ニーチェが終生憧れたのが,イタリアやフランスといったカトリシズムの本場の文物であったというのは,無視できない思想的トピックである。→プロテスタンティズム

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