生産活動は調査,開発,設計,施設,購買,製造,販売,輸送,据付け,修理サービスなどの多くの段階を経て進行し,さらに各段階は分業化されて多数の段階に細分化される。このような生産活動の諸段階を工程stage of worksというが,普通にはとくに製造活動における諸段階を工程という。分業化された最小の単位を工程ということもある。工程管理とは,それぞれの製品やサービスの生産が生産システム全体からみて最も経済的に遂行されるよう計画,実施,統制,改善することである。工程管理においては,〈次工程はお客さま〉という考え方にたつ。工程管理は職制上,品質面での工程の管理と,数量・納期面での工程の管理とに分けて実施されることが多い。普通に工程管理といえば,後者を指すことが多い。
工程管理の方法は生産形態によって相違するし,生産形態は製品やサービスの性質によって相違する。組立工業における自動車やその部品のように1個,2個と数えられる物と,プロセス工業における石油やセメントのような物を扱う場合とがあり,在庫可能な物と生鮮食品やサービスのように在庫不可能な物を扱う場合がある。さらに顧客からの注文の特殊性,一般性によって受注生産的なものと見込生産的なもの,さらには間欠生産的なものと連続生産的なもの,多種少量生産的なものと少種多量生産的なものとに分類される。
生産システムを設計する場合,多種少量生産的なものほど生産工程は汎用性をもつことが有利であるし,少種多量生産的なものほど専用性をもつことが有利である。多種少量生産の極端な生産形態として,ビルディングの建設や大型船舶の建造のように注文が一度きりしか発生しない大規模プロジェクトがあり,これにはPERT(パート)型の特殊な管理手法が用いられる。
自動車のような組立製品においては,製品は複数の構成品から成り立ち,さらに構成品は複数の部品から成り立っている。製品の種類が相違しても,構成品や部品には共通性のあるものがあり,それらは一まとめにして加工するほうが有利である。このような問題を処理する手法としてグループテクノロジーgroup technologyやMRP(material requirements planningの略)などがある。多種少量生産においては,加工工程経路,受注量,受注日,納期を異にした多種多様の製品が構成品や部品に展開されて,さまざまの加工設備を通っていく。構成品や部品のなかには内作されるものもあるし,外部からの購入品や外注品もある。品物が資材として工場に入り製品として出ていくまでの工程を分析してみると,加工のみならず検査,運搬,貯蔵,停滞があり,さらには不良品の発生や手直し,誤送や欠品,作業者の欠勤,設備の故障などの事象が複雑に絡み合っている。このような状況のもとで,任意の時点に入ってくる顧客からの多種多様な注文(オーダーorder)を各工程にジョブjobとして割りつけて処理していかなければならない。しかも顧客に迷惑をかけてはならないし(品質,価格,納期),人や設備の稼働率を上げ生産コストを低減していかなければならない。そこには人や設備の選定や配置(生産システムの設計)の問題があるし,生産システムの保全の問題がある。また生産システムを有効に利用して顧客からのオーダーを経済的に処理していくための計画schedulingの問題があり,オーダーを進捗(しんちよく)していくための統制controlの問題がある。
1940年代後半に端を発したオートメーションへの動きは,装置工業においてはプロセスオートメーションprocess automationを,機械工業においてはメカニカルオートメーションmechanical automationを実現してきた。後者においては単一工程ないし数工程の機械化・自動化(数値制御)やマシニングセンターmachining centerから全工程の自動化・無人化へと進展している。また多様化時代の要請にこたえて,少種多量生産のオートメーションから多種少量生産のオートメーションへと移行している。多種多様な条件・状況に柔軟性をもって適応できるオートメーション,それがフレキシブルオートメーションflexible automation(略称FA)である。これには加工技術,計測制御技術,ロボット,コンピューター,管理技術などの進歩が総合的に寄与している。現在FAの最も進歩した方式としてフレキシブル生産システムflexible manufacturing system(略称FMS)があり,できるだけ汎用性のある柔軟性に富んだ設備を複合して多種多様な部品や製品を自動的に生産するシステムである。
執筆者:新宮 哲郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一定の品質・数量の製品を納期にまにあうように、機械・設備、原材料、労働力など生産にかかわる各要素を効果的に運用するために行われる一連の管理活動をいう。工程管理は、狭義には進度管理または進捗(しんちょく)管理をさすように、各生産工程について作業の進行が計画どおりに行われるよう、生産物に注目しつつ時間計画の下に規制・統制することによって、全生産工程の流れを円滑にすることを目的とする。
工程管理の具体的内容は、生産形態(注文生産・見込み生産、あるいは組立て生産・加工生産)や、生産方式(個別生産・大量生産など)によって異なる。ここでは主として、もっとも多くの工程が要求される注文生産の場合の工程管理について、その業務内容を説明する。
受注に基づいて、どのような製品を、いつまでに、どれだけつくれといった内容の製造命令書が製造部に出されると、製造部では、設計図に従って必要な材料や部品を見積もり、調達の手配をする。材料計画である。それと並行して、製造に必要な工程について、工程の順序、使用材料、機械、治工具、作業時間などの基準が決められる。手順計画とよばれる。続いて手順計画に沿って各工程に仕事量が割り付けられ(工数計画)、必要に応じて外注で調整する(外注計画)。さらに各職場ごとに、仕事量、現場の能力、作業の緊急度などを考慮して、毎日の作業予定(日程計画)がつくられる。以上の各計画に従って製造が開始されると、それ以後は生産統制が行われることになる。
まず各工程の作業が計画どおりに進んでいるかどうかが把握され、必要に応じて計画の修正・促進が図られる。進度管理とよばれる。また、労働量や機械の操業度の調整(余力管理)が行われる。最後に納品が行われる。工程管理は、広義には、以上の受注から納品までの全プロセスが含まれるが、狭義には、生産計画、生産統制の各段階における諸活動をさし、とくに進度管理と同義に用いられることもある。
このように工程管理の機能は、計画機能と統制機能をもち、広範囲にわたるから、その組織をどうするかが重要な課題となる。
工程管理は全社的な立場で考慮されるべきであるが、組織上の位置づけも、工程管理の実効をあげるうえで重要となる。現在広く採用される組織形態は、工程管理の機能を工場長の下に集中させた中央集権型組織と、製造部によって独自のスタッフをもち、中央で統制する分課分権制組織である。前者は単一あるいは同種類製品を製造する工場に適しているのに対し、後者は製造形態のかなり異なった多品種製造工場に適した組織形態である。
[高橋三雄]
『並木高矣著『工程管理の実際』第四版(1982・日刊工業新聞社)』
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出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
…各工程ごとに予算の消化状況が管理されることになる。(3)工程管理 生産される品物を中心に生産工程の細部まで計画し統制することで,工程の決定手法としてインダストリアル・エンジニアリング,ワーク・デザインなどが用いられる。工程計画,日程計画,進度管理などが含まれる。…
※「工程管理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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