改訂新版 世界大百科事典 「クリフト」の意味・わかりやすい解説
クリフト
Montgomery Clift
生没年:1920-66
アメリカの映画俳優。ネブラスカ州のオマハに生まれるが,不幸な結婚生活を送った母の執念で,子どものころから外国旅行を重ねてヨーロッパの〈教育〉を身につける。アマチュア劇団の子役として出発し,アルフレッド・ラントに師事してブロードウェーで認められたのち,《山河遥かなり》《赤い河》(ともに1948)でハリウッドの〈ニュースター〉となり,《女相続人》(1949),《陽のあたる場所》(1951),《地上より永遠に》(1953),《若き獅子たち》(1958)などで,価値観が変わった1950年代アメリカの観客にこたえる新しいタイプのヒーロー,いわゆる〈リベラル・ヒーロー〉を代表するスターの一人となる。その後,《荒れ狂う河》(1960),《荒馬と女》《ニュールンベルグ裁判》(ともに1961)などで俳優としての才能を高く評価されたが,スターをしばる契約をはじめとするハリウッドの伝統を無視する〈異端者〉でもあり,また麻薬,飲酒,同性愛をめぐるスキャンダルがたえずつきまとった。《フロイト》(1962)に続く《ザ・スパイ》(1966)を最後に心臓発作で死亡,監督や共演者たちに知的で〈破滅型〉の早すぎる死を惜しまれた。同世代のライバル,マーロン・ブランドはひそかに多くのことを学びとったといわれる。
執筆者:柏倉 昌美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報