日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルークス鉱」の意味・わかりやすい解説
クルークス鉱
くるーくすこう
crookesite
元素タリウム(Tl)の最初の独立鉱物。1861年イギリスのクルックスによって発見された。その5年後に、スウェーデンのスクリケルムSkrikerum鉱山から発見され、クルックスの業績を記念して命名された。最初は銅(Cu)、タリウムおよび銀(Ag)のセレン化物として記載され、タリウムが主成分かどうか明らかではなかったが、1987年NH4Cu7Se4との比較、あるいは銀をほとんど含まないものの発見から理想式Cu7TlSe4あるいはCu7(Tl,Ag)Se4が確定した。自形未報告。
大陸地域の酸性深成岩体あるいはその周辺の変成岩中に発達する深熱水性金・銀・銅鉱床中に他のセレン化鉱物と共存して産する。日本では未報告。共存鉱物はベルツェリウス鉱、ウマンゴ鉱umangite(化学式Cu3Se2)、セレン銀銅鉱eucairite(CuAgSe)、クロックマン鉱klockmannite(CuSe)、ブコフ鉱bukovite(Tl2Cu3FeSe4)、セレン鉛鉱、サバティア鉱sabatierite(Cu6TlSe4)、含セレンリンネ鉱selenian linnaeite(CoCo2(S,Se)4)、石英、方解石など。肉眼的な外観の記載が不十分なので、同定の基準として採用できる特性の記述が乏しい。ただ、破砕された微小片に二方向の劈開(へきかい)が認められることは事実である。
[加藤 昭]