クルックス(読み)くるっくす(英語表記)William Crookes

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルックス」の意味・わかりやすい解説

クルックス
くるっくす
William Crookes
(1832―1919)

イギリスの化学者、物理学者。1848年から王立化学大学Royal College of Chemistryに学び、1850~1854年ホフマン助手をつとめた。1859年『ケミカル・ニューズ』を創刊以後その編集にあたった。初めファラデー、ホイートストン、ストークスらの影響で、分光器、真空ポンプ、および写真など当時最新の物理的実験装置を駆使した研究を行い、1861年スペクトル分析によりタリウム発見、1873年真空天秤(てんびん)を用いてその原子量を測定した。その際観察された「熱放射の圧力」測定のため、1876年「ラジオメーター」を発明。ついで「電気的ラジオメーター」の製作を契機一連有名真空放電実験に向かい、「分子物理学」を展開。さらに1886年「発生の螺旋(らせん)」を考案プラウト仮説を踏まえて元素起源と発生を論じた。なお、一時心霊術に凝り、「心霊科学」を唱えたこともある。

[宮下晋吉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クルックス」の意味・わかりやすい解説

クルックス
Crookes, Sir William

[生]1832.6.17. ロンドン
[没]1919.4.4. ロンドン
イギリスの化学者,物理学者。王立化学大学で化学を学び,A.ホフマンのもとで助手をつとめ (1850~54) ,セレノシアンに関する研究を発表する (51) など,有機化学者として研究生活を始めたが,G.キルヒホフの研究にひかれ,有機化学から離れて,分光学の研究に転じた。分光分析により新元素タリウムを発見 (61) ,放射計 (ラジオメータ) を発明し (75) ,気体分子の運動を確かめた。真空放電の研究に従事し,クルックス管を発明 (75) ,陰極線が帯電した粒子の流れから成ることを主張,陰極線ルミネセンスの希土類元素への応用についての重要な研究を行なった。希土類元素の研究から,同一元素も重さを異にする原子により構成されると考え,今日の同位体の概念の先駆をなす概念を発表 (86~88) 。希土類元素についての研究は 20年以上にわたるが,スカンジウムおよびその塩については特に詳細な化学的研究をした (1908~10) 。フェノールの防腐作用の発見 (1866) ,ダイヤモンドの合成 (1909) ,都市廃水の研究 (1880~1906) など各分野への貢献も大きい。心霊学,霊媒に関する研究 (1870~73) も有名。

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