日本大百科全書(ニッポニカ) 「セレン鉛鉱」の意味・わかりやすい解説
セレン鉛鉱
せれんえんこう
clausthalite
鉛のセレン化物。方鉛鉱のセレン置換体にあたり、同構造で両者の間には連続固溶体が存在する。自形は確実な報告がない。各種熱水性鉱脈型金・銀・亜鉛・鉛鉱床に産する。日本では鹿児島県串木野(くしきの)市(現いちき串木野市)串木野鉱山の浅熱水性金・銀鉱脈鉱床中に顕微鏡で確認できる大きさのものを産する。本鉱床からの硫化物にはナウマン鉱のようなセレン化物も知られていた。アメリカ、コロラド州に分布するいわゆるコロラド高原型層状ウラン・バナジウム鉱床に随伴的に産することもある。
共存鉱物は、セレン水銀鉱tiemannite(化学式HgSe)、クロックマン鉱klockmannite(CuSe)、ベルツェリウス鉱、閃ウラン鉱、自然金、石英など。同定は方鉛鉱同様の鉛灰色で区別しにくいが、劈開(へきかい)はやや明瞭ではない。比重8.28は方鉛鉱の7.56より明らかに大きいが、この程度の数値になると、なかなか区別はできない。共存鉱物として日本ではあまりみられないセレン化物があり、これらの存在から見当のつくことがある。英名は原産地ドイツのクラウスタールClausthalにちなむ。
[加藤 昭]