日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルツェリウス鉱」の意味・わかりやすい解説
ベルツェリウス鉱
べるつぇりうすこう
berzelianite
セレン化銅鉱物の一つ。以前はCu2Seの理想式が適用され、高温型輝銅鉱high chalcocite(化学式Cu2S)のセレン(Se)置換体とされてきたが、2008年コンゴ共和国ムソノイMusonoï鉱山産のものについて再検討が行われ、結晶学的には方輝銅鉱digenite(Cu9S5)の高温相のSe置換体に相当することが判明し、また合成実験結果も理想式Cu1.8Seを支持したので、これに改められている。自形未報告。
浅~深所生成熱水性鉱脈型銅鉱床に産するが、随伴金属は産地によって異なり、金、銀、鉛などのほか、ウラン、コバルト、白金族元素などが知られている。日本での産出は報告されていない。共存鉱物はクロックマン鉱klockmannite(CuSe)、セレン鉛鉱clausthalite(PbSe)、アギラル鉱、輝銀銅鉱stromeyerite(CuAgS)、クルークス鉱、脆銀(ぜいぎん)鉱、自然金、方解石、石英など。同定は銅鉱物にしては例が少ない銀白色。叩くと展性があるので、微粉にはならない傾向がある。条痕(じょうこん)は案外光沢がある。輝銅鉱より青味がなく、比重6.82は輝銅鉱の5.80よりはるかに大きい。スウェーデンの化学者で元素セレンの発見者ベルツェリウスにちなんで命名された。
[加藤 昭]