日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロヨン」の意味・わかりやすい解説
クロヨン
くろよん
自営業や農業などの従事者に比べ、サラリーマン世帯の重税感を表すことば。昭和40年代なかばから使われ始めた。所得から必要経費などを差し引いた課税対象所得のうち、税務当局による所得捕捉(ほそく)率の業種格差についての不公平感を表現した数字とされる。「クロヨン」は給与所得者、自営業者、農業世帯の課税所得捕捉率が、おおむね9割対6割対4割になることを意味する。
サラリーマンなどの給与所得者は原則として源泉徴収されているうえ、所得控除などもガラス張りで、課税所得の捕捉率は約9割に達するとされる。これに対し、自営業などの事業所得者は家屋、車両、交際費など、事業と私生活の区別がつきにくく、私的支出が必要経費に算入されやすいため捕捉率は6割にとどまるとされる。また、農林漁業従事者の捕捉率は約4割に低下するとみられている。さらに、サラリーマン世帯の重税感はクロヨンより重いとして生まれたのが「トーゴーサン」(10対5対3)という表現である。政治資金がほとんど課税対象とならない政治家を加え、「トーゴーサンピン」(10対5対3対1)という表現もある。ただ税務当局は捕捉率を公表しておらず、クロヨンやトーゴーサンはあくまで国民の経験や実感に基づく概数値である。クロヨンに象徴される課税不公平感の解消が、1989年(平成1)4月に消費税(間接税)が導入された理由の一つとされた。
[編集部]