グランド・ホテル(読み)ぐらんどほてる(その他表記)Grand Hotel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グランド・ホテル」の意味・わかりやすい解説

グランド・ホテル
ぐらんどほてる
Grand Hotel

アメリカ映画。1932年作品。ビッキ・バウムのベストセラー小説をウィリアム・A・ドレイクWilliam A. Drake(1899―1965)が戯曲化。さらにそれをもとにエドマンド・グールディングEdmund Goulding(1891―1959)監督が流麗な技法で映画化した。ベルリングランドホテル。社長と彼に雇われた速記係、プリマバレリーナ、工場帳簿係、なぞめいた男爵などが宿泊していた。彼らはもともと面識はなかったが、時間がたつにつれて、互いに縁ができる。それにつれて彼らの実情や背景もみえてくる。特定の主人公がいるわけではなく、ただ各人物のエピソードを並べた群像ものでもない。来合わせた人々それぞれの2日間の交わりを描きながら、総体として人の世というものを浮かび上がらせる。グレタ・ガルボやジョーン・クロフォードらMGM社のドル箱スターが何人も顔をあわせ、構成も巧みに、人生の縮図を端的に描き出し評判をとった。以後、同工の作品が続き、ある場所を舞台に多くの人物のドラマを交錯させる手法をグランド・ホテル形式というようになった。

[出口丈人]

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デジタル大辞泉プラス 「グランド・ホテル」の解説

グランド・ホテル〔ミュージカル〕

①1989年初演のミュージカル原題《Grand Hotel》。作詞作曲:ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト、脚本:ルーサー・デーヴィス。オーストリアの作家ヴィッキー・バウムの小説に基づく。1991年に来日初演。1993年に宝塚歌劇団により上演された。
②1932年製作のアメリカ映画。原題《Grand Hotel》。①の映画化で、作劇法としての“グランド・ホテル形式”の語源となった作品。監督:エドムンド・グールディング、出演:グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード、ウォーレス・ビアリー、ライオネル・バリモアほか。第5回米国アカデミー賞作品賞受賞。

グランド・ホテル〔スウェーデン〕

《Grand Hotel》スウェーデンストックホルムにある高級ホテル。1874年創業。1901に設立されたノーベル賞の受賞者が宿泊するホテルとして知られる。1930年までは、授賞式もこのホテルの「鏡の間」で行なわれていた。ノーベル文学賞受賞者は最上階で王宮を望む「ノーベル・スイート」に宿泊するのが慣例

グランド・ホテル〔ノルウェー〕

《Grand Hotel》ノルウェーオスロのカール・ヨハン通りにある老舗ホテル。1874年開業。中央に時計台のあるロココ調の外観で、国会議事堂や王宮にも近い。カフェ「グランド・カフェ」は、19世紀後半には画家のムンク、劇作家のイプセンといった芸術家たちの溜まり場となっていた。

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世界大百科事典(旧版)内のグランド・ホテルの言及

【オムニバス映画】より

…アメリカの映画史家によると,最初のオムニバス映画はパラマウントの《百万円貰ったら》(1932)で,思いがけなく転がり込む大金を巡る八つの挿話からなるこの映画は,18人の脚本家と7人の監督が名まえを連ねているが,MGMをライバル視していたパラマウントが企画の目新しさを意図したものであった。一方,MGMの,一つのホテルに出入りする人々の挿話を組み合わせて人生の明暗を描いた《グランド・ホテル》(1932)は,アカデミー作品賞を受賞し,その立体的な構成が〈グランド・ホテル形式〉ということばまで生んだが,そもそもは〈空の星より多いスター〉と誇ったMGMがオールスターキャスト作品として企画したもので,〈オムニバス・ストーリー映画〉,あるいは〈エピソード映画〉と呼ばれた。燕尾服を巡る六つの挿話からなるJ.デュビビエ監督の《運命の饗宴》(1942)は,〈オムニバス・エピソード映画〉と呼ばれた。…

※「グランド・ホテル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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